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「没落先進国」キューバを日本が手本にしたいわけ

吉田太郎[著]

2000円+税 四六判 336頁 ISBN978-4-8067-1390-6




人口減少、超高齢化、経済の衰退に直面する日本が参考にするのは、質素でも、ビンボー臭くない、キューバの「没落力」だ!



明治維新以来、「坂の上の雲」を目指して登り続け、世界第2位の経済大国と1億総中流を達成した日本は、いまや米国に次ぐ世界第2位の「貧困大国」だ。食品偽装、国土荒廃、医療崩壊、学力低下、派遣労働者の大量失業・・・
どこを見渡しても、希望のカケラすら見えない。だが、経済成長は豊かさとは直結しないし、モノの豊かさは幸せとも違う。

有機農業で100%自給。高い教育水準と豊かな文化、助け合う地域住民、何よりも大切にされる子どもたち、あくせく働かなくても不安なきフリーター生活。次々と訪れる外国人たちが口をそろえて「モノは貧しくてもこの国には貧困がない。生まれ変わるのであれば、この国の庶民に」とまで賞賛したのは、キューバではなく、150年前のニッポンだった。

まもなく人類はピーク・オイルを迎える。大量の石油消費を前提とした経済成長もトリクルダウンも、もはやない。となれば、求められるのは、血を流しての資源争奪戦ではなく、モノに頼らずに幸せに暮らすためのノウハウ、いわば「没落力」だ。
しかし、成長のための提言はあっても、安全な没落のためのマニュアルはない。となれば、すでに超低空飛行をしている「没落先進国」にヒントを求めるしかないだろう。

3世代詰め込みのウサギ小屋、低迷する食糧自給率、慢性的なモノ不足と後を絶たない亡命。キューバは、お世辞にも格差なき有機の楽園とはいえない。だが、家が雨漏りはしてもホームレスはただ一人としていない。竹を利用してエコ住宅を建て、農村では農民たちが種子を交換しあって自給に励む。度重なる巨大ハリケーン来襲にもほとんど死傷者を出さない防災対策と、文化豊かな国づくりをキーワードに、首都ハバナは数世紀前の景観を復元した歴史博物館となった。

都市農業、環境、医療、教育と、キューバの先進優良事例を描いてきたキューバ・リポートの第5弾は、江戸期の日本を参照しつつ、キューバのマイナス面に光をあてて日本を逆照射する。
モノは貧しくても貧困なきキューバは、人びとが尊厳を持って生きられる国へと日本が優雅に没落していくための指針となるだろう。

【目次】



T 超低空飛行の勧め
 1 太平洋と大西洋の二つの島の奇妙なシンクロ
     「坂の上の雲」から「崖の上のポニョ」へ
     超低空飛行国家‐没落先進国キューバに学ぶ
     ワーキングプア社会から登場したゲリラ闘争
     東西冷戦終焉後の地政学

 2 地球環境の制約内で暮らす
     世界唯一の持続可能な国家
     経済危機を契機に省エネ運動を展開
     教育を通じて全国民への省エネを実現
     他国にも広がるエコ革命の輸出

 3 キューバは楽園なのか
     ハバナの休日
     マスコミも着目しはじめたキューバの医療と教育
     楽園の住民たちの四つの不満
     コラム1 キューバは所得差200倍もの超格差社会


U 雨風を凌ぐ住まいを作る
 1 オンボロ住宅屋上活用法
     屋上にドラム缶を吊り下げて野菜を栽培
     屋上でウサギを飼育
     数世代同居のウサギ小屋生活
     家の物々交換に人だかり
     偽装結婚からペテンの詐欺まで

 2 コミュニティの建築家
     ボランティアで住宅建設
     経済危機で破綻したプレハブ住宅建設モデル
     オーナーとの対話を通じて家を改築
     建て主に自身をつける家づくり
     コミュニティによって住宅問題は解決できる

 3 エコ資材で家を建てる
     オンボロ住宅を襲うハリケーン
     人工衛星から古代ローマの技術に逆戻り?
     建築資材として竹を活用
     建築資材の地産地消で地元に雇用を創出
     マイクロ・クレジットで資源は動く
     南々協力で他国へも広まるエコ資材
     コラム2 「古代の建築資料」再発見の理由

 4 街づくり運動で蘇るスラム
     ハードからソフトへ・住民参加型のワークショップ
     住民参加でゴミを片づけ、ゴミ捨て場を森に変える
     経済危機で元の木阿弥
     コラム3 市民の声は真実か?


V 餓死しないために飯を確保する
 1 高い食費と乱れる食生活
     エコ・レストランのキャンドルナイト
     収入の三分の二にも及ぶ食費

 2 荒れる農地とお役人農政

        わずか半分しか耕されていない農地とサトウキビ改革の失敗
     機能不全の役人天国
     始まったラウルの農業改革
     遊休地を貸し出し、やる気のある農家を規模拡大

 3 地元農業改革プログラムで変わる農村
     ハリケーン被災後も挫けない農村現場
     アグロエコロジーで自給を目指す山村
     エコ農法と地方分権化を進める地元農業改革プログラム
     参加型のプログラムで変わる女性たち
     コラム4 都市農業と有機農業

 4 農民参加型の品種改良
     農民たちが自ら行う品種改良
     経済危機で種子生産力が半減
     苦肉の策で始まった農民参加型の種子改良
     種子交換フェアで品種が二〇倍に
     各自の好みに応じた多様な育種
     高収量品種よりも優れもの
     農民を信頼することでコストもエネルギーも削減


W 国民参加で安全・安心社会を実現する
 1 ハリケーンで死傷者が出ない国
     災害の方程式‐キューバは国連防災のモデル国
     ペットも一緒に避難所に避難
     被災はあくまでも自己責任

 2 皆で築きあげる安全の文化
     顔が見えるハザード・マップづくり
     衛生管理と予防で被災者の健康を保障
     世界を視野に入れた防災医療センターの防災教育
     ボランティアが総がかりで取り組む災害復旧
     教育を通じて安全の文化を育む
     格差社会をなくすことが被害も減らす

 3 地元学を生かす安心社会
     地元学を生かす安心社会
     二度のハリケーンにも挫けずに学校を復旧
     地元学で地域の課題を解決する子どもたち
     反貧困の「正義」とは「希少資源の配分問題」
     コラム5 したたかな小国の生き残り戦術


X お金やモノよりも文化を大切にする国
 1 子どもたちは幸せになるために生まれてくる
     赤ちゃんとお母さんの健康を守る
     母乳育児のために一年間の産休
     父親にも家事と育児のための産休を

 2 民衆教育と参加型の政治改革
     縦割り行政の限界を突破するために市町村を“逆合併”
     広まる民衆教育で変わる人々
     ソ連崩壊を契機に始まった民衆参加
     輸入モノの社会主義を見直す
     住民参加によって築かれる若者たちの明日

 3 芸術文化を大切にした国づくり
     ソ連崩壊で風穴があいた自由への扉
     文化の家を通じて国民の芸術力を伸ばす
     文化を軸に格差に対抗‐心を癒し自由になるためのプロジェクト
     所有から満足する文化へ

 4 滅び去りしパックス・トクガワーナ
     貿易赤字で資源枯渇したジパング
     外国人を驚かせた教養高きフリーター国家
     自己責任のグローバル経済から鎖国自給という選択
     権力と富を分けた徳川のガバナンス
     マハンの進出プランの餌食にされたキューバ

 5 人が尊厳をもって暮らせる街を作る
     数世紀前にタイムスリップできる巨大博物館
     先人の意思を継承し歴史文化財を守る
     自己財源で歴史空間を復元
     社会的事業に収益の四割をまわす
     歴史伝統文化を享受する市民たち
     建物の復元修復で雇用を創出

あとがき
参考文献
用語集
著者紹介