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地雷リポート 【書評再録】 | |||
●朝日新聞評(1998年1月25日)=この本にはあいまいさがない。読んですとんと納得する。地雷とは、地球をむしばむがん細胞のようなものである、と。 すさまじい現実に知らぬ顔の、大国への怒りが、穏やかな筆致の背後にのぞく。国際社会は「覇権国家の思惑に振り回され続ける」のか「多数の人々が何かがおかしいと考えた時」「(人々の)総意で是正することができる世の中になる」のか、と問いかける。 素直で、正しい発想だと思う。この問いは未来を開く鍵にもなり得る。 ●日本経済新聞評(1997年12月7日)=日本にはこれまで、地雷問題に正面から取り組んだ本がほとんどなかった。そうした中で「地雷リポート」は、タイムリーな出版となった。ビデオジャーナリストの著者はアンゴラとカンボジアを取材し、凄惨な地雷被害の現場をルポした。そのうえで地雷廃絶を求める声が世界に広がり、政治を動かしていく背景を平易に解説している。 ●北日本新聞、中国新聞ほか(全国配信記事)評(1997年12月7日)=地雷とそれをめぐる世界の動きを取材した日本で初めてのリポートである。 著者は元AP通信記者の若きビデオジャーナリストで、テレビの報道番組のため、内戦で国土の大半が地雷原と化したアンゴラとカンボジアに向かった。この両国での取材が、本書の中心をなす。自ら地雷原に立ち、息の詰まるような除去作業を撮影する場面には、圧倒的な迫力がある。 地雷廃絶に身を挺するNGOの人々。ディマイナー(除去作業員)となって命がけで国土再生にかける現地の若者。初めて見る日本人を歓迎してくれたアンゴラの地雷難民最長老の「日本政府の親分に伝えてくれ。地雷など一刻も早く焼き捨ててしまえと」という叫びなど、胸を打たれずにはいられない。 本書は「時の書」というべきスリリングなリポートになり得た。同時に、百万個の地雷を保有し、署名までのプロセスで揺れ動いた日本への警鐘の書とも言えるのである。 ●時事通信全国配信記事・神奈川新聞「著者に聞く」ほか(1997年11月25日)=世界中に埋められている対人地雷の数は一億一千万個。毎年二万五千人の、主として非戦闘員が死傷している。毎年250万個が新たに埋設される一方で、各国の非政府組織の懸命な努力によって除去される数はわずか十万個。新たな埋設がなくなっても、完全除去まであと千年はかかる計算だ。 「地雷は無差別兵器。被害を食い止めるためには、製造、貯蔵、移転、使用を国際条約で全面禁止する以外にない」と、国際ジャーナリストの神保さんは力説する。 今年初め、アンゴラとカンボジアの地雷被害の実態を取材してきた。 両国では欧米のNGOのメンバーが、現地の青年たちを訓練しながら、地道に地雷除去に取り組んでいた。地雷の種類が多く、処理方法が異なるため、今のところ最も確実な方法は手作業しかない。確率では、約5000個を処理するごとに1人の除去隊員が死傷するという危険な仕事で、それでも除去率は99.7%止まり。「1000個地雷が仕掛けられていたゴルフ場で、除去が終わりました、残っているのは3個だけですと言われて、あなたはプレーができますか」 ●日経ビジネス評(1998年1月5日号)=撮影、取材、編集の全工程を1人で行うビデオジャーナリストの著者が、アンゴラとカンボジアで地雷原を歩き、凄惨な被害の現場をルポ。地雷問題の本質に迫った。 除去作業に当たる非政府組織スタッフや難民キャンプのリーダーが日本人に望むことは、寄付金などではなく、「自国の政府に廃絶の必要性を訴えてほしい」。著者の日本政府に対する強烈なメッセージとなっている。 ●アジア記者クラブ通信評(1997年12月号)=2年間、地雷について追い続けてきた取材の内容を活字にまとめたもので、12月3日から始まるオタワでの条約調印会議を前にタイムリーな著作になっている。 地雷をめぐる国際状況や地雷についての基礎知識など幾つかの項目に分かれているが、圧巻なのはやはりアンゴラ、カンボジアの現地取材をまとめた部分だ。中でも、アフリカの地雷被害国であるアンゴラでの現地レポートは、この問題にかかわる人々にとっても貴重な情報源であろう。 地雷原での取材では、イギリスのNGOが、現地の青年を育てながら地雷除去作業を行っている様子を紹介。細かくディテールまで紹介している。この部分はたいへんに興味をひく部分である。 「地雷リポート」には、1枚の、地雷を踏んでしまった少年の写真が掲載されている。白黒写真なので鮮血の部分がある程度緩和されていながらも、少年の身体はまさしくぐちゃぐちゃの状態だ。うつろに天井を見上げている少年の眼差しが痛々しい。 もしこの少年が自分の子ども、または幼い兄弟であったとしたら、我々はどうするだろうか。筆者は本の冒頭でそう問いかけてもいる。 ●THE21評(1998年1月号)=国際的な問題意識が高まりつつある地雷問題の実態を、その兵器の恐ろしさ、被害の現状とともにつぶさにリポートする。アンゴラやカンボジアの子供たちを覆う地雷の暗い影を取り除くために、いま何をすべきか。 ●教育新聞評(1997年12月22日号)=本書は地雷について、対人地雷とはどんなものかから始まって、地雷が多く埋められているアンゴラやカンボジアをリポートし、さらに地雷に関する日本の考え方や今後のあり方を述べているものである。 取材といえども、撤去にちょっとでも間違いがあればどんなことが起こるのかは予想もつかない。その分、このあたりの展開には「事実」の重みがあり、生半可な冒険小説などよりもずっと手に汗握る展開で、どきどきしながら読み進むことになる。また、地雷をどんどん埋めていくゲリラ側の大佐や、地雷で足を失った人へのインタビューもあり、「戦争」の持つ重みに衝撃を受ける。 地雷がどんなに非人道的で、この地上からなくすべきものであるかは本書を読むとよくわかる。そして、読者はそれを踏まえた上でどうするのかの宿題を出されることになる。 ●出版ニュース評(1998年1月下旬号)=われわれが住むこの地球に撒き散らされた「スローモーションの大量殺戮兵器」と恐れられる地雷の実態と、その廃絶に向けて地道な活動をする「地雷禁止国際キャンペーン」などのNGOを紹介し、日本ができる国際貢献とは何かを明らかにするレポートである。 ●学鐙評(1998年1月号)=人類の狂気である地雷を追って、その基礎知識と禁止条約の推移を語るが、国中地雷原ともいえる、アンゴラ・カンボジアの現地取材の生々しいリポートには胸がつまる。日本も国内製造の地雷保有国である。 ●フラッシュ(FLASH)評(1997年12月23日号)=世界の「対人地雷」図鑑 全世界で一億個以上も埋設されている“殺戮兵器”を徹底解剖。 ●聖教新聞評(1998年1月14日号)=世界と日本の地雷を巡る状況をつづった本書の白眉は、1500万個の地雷が眠るアンゴラと、埋設密度世界一のカンボジアでの地雷除去作業のルポ。 本書は、廃絶への熱意で徹底取材した貴重なリポートである。 | |||
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