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地雷リポート

【内容紹介】本書「はじめに」より


 もしご自分の家族が、仕事の帰り道に地雷を踏み死んでしまったら、あなたはどうするだろうか。もし自分自身が地雷を踏み足を失ってしまったら、その後のあなたの人生はどう変わるだろうか。もし自分の子どもが学校で遊んでいる間に地雷を拾い上げ、手を吹き飛ばされたら……。
 日本ではこんなことはまずあり得ないので、なかなか現実的な質問としては受けとめにくいかもしれないが、実は世界ではいまでも毎日このような状況下での生活を強いられている国が70以上もあることをご存知だろうか。
 対人地雷による民間被害は、既に10年ほど昔から非常に深刻な状態に陥っていたが、日本でも国際的にも、対人地雷問題がここまで深刻な人道問題となっているとは、つい最近まではあまり認識されていなかった。ところが一昨年の後半頃から地雷問題に対する国際的な問題意識が突如として高まり、次から次へと地雷問題の実態が国連や人権NGOの手によって明らかにされるにつれ、対人地雷問題が既に危機的な状況を迎えていることが次第にはっきりとしてきた。そして今や対人地雷問題は、国際社会が抱える最重要課題に数えられるまでになっている。
 今この瞬間にも世界のどこかで無実の人が地雷を踏んで、手足を失ったり命を落としたりしているという厳然たる事実は、日本にいる私たちにとっては、なかなか等身大で受けとめることが難しい問題かもしれない。しかし対人地雷問題が国際的人道問題として猛スピードで動き始めている中、日本はどうやらそうした世界の動きから取り残され始めているようだ。そして私たちはそうした日本の立場に、全面的な責任を負っている。
 本書の最大の目的は、地雷という兵器の恐ろしさと、地雷が世界中で及ぼしている被害の実態を少しでも多くの方々に知っていただくことにある。しかし、知るだけでは、それはただの情報にすぎない。情報が知識となり、そしてそれが英知となるためには、まず問題の実態を知ったうえで、問題意識に目覚めた人々が行動を起こすことが不可欠だ。
 平和と繁栄を享受する私たちが、地雷問題に対してできることは決して少なくない。私は一人でも多くの日本の人々に、地雷という兵器の特異な非人道性や残虐さと、今この瞬間にも世界中で起きている地雷被害の実態を知っていただくことが、様々な行動のきっかけとなることを切望している。
 聞いたところでは世界の地雷問題について日本語で書かれた文献が現時点ではまだ一冊もないそうだ。これでは日本の人々が地雷の問題を正確に認識することも困難だろうし、ましてや正当な世論形成は期待できない。この書が少しでも多くの方々にとって、地雷問題に関心を持つきっかけとなることができれば幸いである。
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