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帝国海軍士官になった日系二世

【書評再録】


●朝日新聞評(1994年9月18日)=旧海軍の連合艦隊が壊滅した沖縄特攻作戦には、日本滞在中に戦争に巻き込まれた6人の米国籍日系2世が海軍軍人として参加していた。この本は、6人中ただ1人生還した2世海軍少尉の人生とその周囲の記録である。米国籍を失った戦後は、日本人として草創期の民間航空界で働いたこの二世の足跡は、そのまま日米の現代史と重なる。

●産経新聞評(1994年9月8日)=帝国海軍士官として特攻作戦に出撃し奇跡的に生還した2世の生涯を縦糸に、彼の祖父や多くの友人など在米移民や2世が日米のはざまでたどった苦難の歴史に光を当てたヒューマン・ドキュメントである。
本書は著者の意図を超えて日本人とは何か、そのアイデンティティーを日系2世の生涯を通じて読者に深く考えさせる内容を含んでいる。

●北海道新聞ほか評(1994年9月4日)=軽い気持ちで読み始めて読み終わったあとしばらくもの思いにふける、重いものがずしりと心に残るという本があるが、この本もそのような一冊である。
心を2つの祖国に置いた人間の苦悩と努力が的確に描かれ感動する。
実在の人物の生きた軌跡を追いながら“国と国”という大きいテーマを浮かび上がらせた筆者に敬意を表したい。

●日経ビジネス「私の一冊」中村裕氏・ロイヤルパークホテル総支配人(1995年3月6日)=日系二世である山田重夫が、母国米国から日本に留学し、第二次世界大戦に巻き込まれていく様子を描いたノンフィクション。淡々と描かれる文章からは、2つの祖国の戦争に揺れ、心の傷跡を背負いながら生きる一人の人間の苦悩がにじみ出ている。
日系二世という立場から見た、日米社会比較論としても興味深いものになっている。

●歴史と旅評(1994年9月号)=太平洋戦争で日系2世が困難な立場に追い込まれ、アメリカにあってはその忠誠心が問われたが、重夫のようにはからずも日本軍人として戦争に巻き込まれ、九死に一生を得るという数奇な体験をした人はいないだろう。
本書は、運命の変転を乗り越えて、さらに力強く後半生を生きる姿にもいきいきとした筆が及ぶ。戦争の残酷さを本書は語らない。残酷な運命をものともせぬ生命力を本書は物語るのである。

●歴史読本評(1994年9月号)=1945年4月6日、戦艦大和とともに撃沈された巡洋艦矢矧には、日系2世の士官4名と準士官2名が乗船していた。このうちただ1人、幸運にも奇跡的生還をはたした海軍少尉がいた。本書は、この人物のたどった数奇な人生をあますところなく描いた記録である。米国国籍をもちながら心ならずも帝国海軍士官となり、両国のたどる運命に翻弄される苦悩に満ちた生涯は、戦前・戦中・戦後それぞれの日米関係を物語る貴重な証言と言えるだろう。

●日刊ゲンダイ評(1994年8月11日)=「矢矧」に乗艦し、奇跡的に生還し、戦後は日本人として航空業界で活躍した山田重夫氏の数奇な人生をつづったものである。

●世界の艦船評(1995年1月号)=今からほぼ半世紀前の昭和20年4月6日、戦艦大和以下10隻からなる日本艦隊が、沖縄特攻のため呉を出撃した。この艦隊に予備士官として参加し、奇跡的に生還した一人のアメリカ出身日系2世の人生を綴ったのが本書である。
興味深いのは、日系2世という、ともすれば日本からもアメリカからも疎外されがちな立場にありながら、むしろそれをバネとして戦前、戦中、戦後を生きた主人公の姿で、日本生まれということに安住しがちな普通の日本人とは比較にならないたくましさが感じられる。

●聖教新聞評(1994年9月14日)=2つの祖国が敵と味方に分かれて戦う--太平洋戦争とは、日系2世にとって悪夢でなくて何であったろう。戦争の無意味さ、空しさを、彼らの人生は、百万言の言葉に替えて訴えかけてくる。
本書はある米国への移住家族と、日本海軍の通信隊員として戦艦大和の特攻出撃に参加した2世たちの、感動的なドキュメントだ。
戦争に「正義」などない。残されるのは、無数の豊かな人生が、大義名分のために奪われるという事実だけだ。2世たちの数奇な軌跡と死は「戦争」という行為の本質を、まざまざとえぐり出す。
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