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三峡ダム 建設の是非をめぐっての論争

【書評再録】


●日本経済新聞評(1996年10月6日号)=「三峡」。幽玄にして秀麗なこの峡谷は李白、杜甫、白居易などの詩人によって称えられ、中国山水画の故郷といわれてきた。両岸はまさに文化遺跡の宝庫であり、「三国志」の主要舞台もまた、この周辺だった。
このほど出版された「三峡ダム」は、40編におよぶ論文、解説、インタビューによって、このダム建設の問題点をあますところなく描き出している。本国では当然発禁処分。

●朝日新聞評(1996年9月29日)=巨額の投資や、「三国志」いらいの歴史的景観の消失、大量の住民移転、生態系破壊に見合う恩恵があるのか。専門家のなかにも異論があるのに、議論が尽くされていない。
そういう思いの記者たちが、インタビュー取材や専門家の論文を通して、問題点を突いた。ダム延期を提言した周培源・元北京大学長の書簡や推進派の主張なども収録されている。
国家威信の発露だったダムは、世界的に見直されている。公共事業チェック機構を実現する議員の会編の「アメリカはなぜダム開発をやめたのか」も、その線の新刊だ。

●読売新聞評(1996年10月6日)=本書の基になった原書は、「長江、長江」と題して、1989年3月に緊急出版された。その後、政治の激動で事態は暗転。「長江、長江」は発売禁止となって残部は回収・焼却処分にされたのである。
本書はその初版を基に英語版などの内容を加味して編集されており、賛否双方の技術的な論争点および刊行にまつわる経緯がわかりやすくなっている。

●東京新聞「印象に残った3冊・中村達也・経済学者」(1996年12月29日)=揚子江で始まった世界最大のダム計画の問題点を扱った、ここにジャーナリストありと思わせるような異議申し立ての書。

●北國新聞「きょうの人」欄(1996年9月23日)で紹介されました。

●週刊金曜日評(1996年10月18日号)=洪水防止の有効性、電力のコスト、完成後の土砂の堆積、船を通す水門の機能、130万人に及ぶとみられる住民立ち退き、過大な投資のインフレ圧力、自然環境や史跡への影響など、ダムで起きそうな多くの問題について疑義が示される。地震や地すべり、外国やテロ分子のミサイル攻撃によるダム崩壊の可能性にまで言及する。推進派の主張も紹介されている。
訳注は行きとどいており、多くの問題を複合的に扱う本書の論旨を理解する助けになる。

●読書人評(1996年11月1日号)=面白く興奮させられる
ダム問題とは常に政治の問題であることを見事に明らかにしている
近頃これ程面白く興奮させられた本は無かった。
ダム問題、水系問題に関心を持つ人々ならば、ここに書かれたダムサイトの問題、堆砂問題、地滑り問題、洪水防止問題、電力問題、住民移住問題、資金問題、環境問題等々が我々の胸に痛みをもって共感せざるを得ないだろう。
この本を読みながら感じる興奮は、戴晴や多くの学者らの地球環境問題について我々と共通の論理による真摯な訴えへの共感から来るものだ。

●土木学会誌評(1997年4月号)=「巨大三峡ダム」建設の是非をめぐって、中国国内での論争を集大成したものである。
ダムサイトの妥当性への懸念、堆砂問題、地滑りと土砂崩れ、中・下流域の洪水防止への疑問、送電供給問題・船舶航行、住民移住、環境、資金等、ダム建設をめぐるあらゆる問題を網羅して述べられている。

●ATT研究情報評(1997年6月18日号)=本書はプロジェクト反対派の論文を中心に、賛成派のそれを含む「論争の書」である。A5判・450ページもの大著、これが2刷目に入ったというから、日本でも大変な注目を浴びている。

●国際開発ジャーナル評(1996年12月号)=この原書は現在、中国で発禁処分を受けている。そこに、本書の特異性が秘められているといえる。
本書がなぜ三峡ダム建設に反対かという論争を反対論文、インタビューなどで展開しているのは言うまでもないが、その前に、中国政府当局というより、個々の中国官吏が伝統的な宮廷闘争を繰り広げるような形で反対勢力を潰していくプロセスを描いている点に本書らしい特色があると思う。

●地団研そくほう評(1997年1月1日号)=本書は三峡ダム建設で発生する数々の問題点があげられている。ただし、この本は、単純にダム建設反対の本ではない。いろいろな立場の人たちの声を集め(賛成派代表の発言内容ものせている)、巨大ダムの必要性の是非を整理し、かつ代替案の提案もしているのである。
これは、祖国を本当に危惧した人たちの声である。
本書は、ダム建設にあたっての技術的、社会的な両面のドキュメントであり、日本のダム地質技術者だけでなく、一般の人たちにもぜひ一読してもらいたい本である。

●東方評(1996年10月号)=綿密な調査、各方面への取材に基づいた警鐘の書。

●日本と中国評(1996年11月5日号)=中国国内の論争を集大成
センセーショナルな扱いを受けた書籍だが、内容は中国人民政治協商会議全国委員会委員や専門家の意見を中心に構成。土砂の堆積、環境破壊、多数の「移民」受け入れ、資金などの問題を丁寧に指摘。建設賛成の意見も紹介しており、読みごたえがある。

●日中友好新聞評(1997年1月25日号)=中国国内で三峡ダム建設でどのような議論があり、この議論と建設決定とがどう関わったかを知る適切な本である。
中国版の発売禁止の経緯、書簡集、インタビュー、論文、資料から構成されている。論文の中に「三峡プロジェクトに関する十大論争点」があり、これによって論争点、賛成派と反対派の意見の大要を知ることができる。洪水防止、船運、土砂堆積、住民移住、資金など十項目について論点が把握できる。
アメリカが環境問題からダム建設への融資規模を縮小しているのに、日本は入札に加わり、深く関わっていこうとしているが、本書は、この姿勢に対して警告の書でもある。
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