トップページへ

沈黙の川
ダムと人権・環境問題

著者……パトリック・マッカリー →→著者略歴と主要著書
訳者……鷲見一夫 →→訳者略歴と主要著書
4800円 A5判 412頁 1998年6月発行

大規模ダム建設から集水域管理の時代へ。
世界各地の河川開発の歴史と現状を、長年にわたるフィールド調査と膨大な資料からまとめ上げた大著。
川を制御する土木工学的アプローチの限界を、生態学的・政治的視座から描き出す。
河川を保護し、回復に導く鍵はどこにあるのか。曲がり角にある日本の河川行政に一石を投じる書。

内容紹介のページへ 書評再録のページへ 読者の声のページへ
【主要目次】
第1章・政治権力と水
  • 川の小史
  • ダム--その構造と役割
  • ダム建設の小史
  • 大地をよぎって落下する水--アメリカにおける巨大ダム
  • 狂気の河川を正気にする企て--ソ連におけるダム建設
  • 大規模ダムの南側諸国への広がり
  • 巨大主義の病弊
  • 大型ダム時代の終焉?
第2章・もはや川ではない--ダムの環境影響
  • 環境実験
  • 後世への水没遺産
  • ダムと地質--地形学的影響
  • 飢えた氾濫原
  • 飢えた海岸
  • 汚れたダム--水質への影響
  • 青年期のダム貯水池
  • 甘い水を塩辛い水に変える
  • 魚は通れない--ダムと回遊魚
  • 迷路に入り込んだ放浪者--水文学的影響
  • 河口への影響
  • 河川工事
  • 氾濫原の隔離
  • 影響緩和ゲーム
  • 孵化事業の失敗
  • 河川を下る……
  • そして、再び遡上する
  • カメラ撮影向けの緩和措置
  • 環境影響評価(EIA)産業
第3章・凶運の伽藍--ダムの人的影響
  • 虚偽的な水没者数と統計
  • 河川の下流域では
  • 最終的打撃--ダムと先住民
  • ダム着工までの期間
  • 流血の下で建設されたダム--チショイ・ダムでの大量殺害
  • 冠水の後に
  • 共有物の喪失
  • 再定住地での死亡
  • 華やぎの消失
  • 再定住政策の失敗
  • ダムと疾病
  • 住血吸虫症--ダムと巻貝
  • マラリア--生態学的災害
  • ダムと蚊に起因するその他の疾病
  • 蝿と寄生虫
第4章・機能麻痺の時期--大規模ダムの技術面での失敗
  • 軟弱な地盤構造--ダムと地質
  • 水文学の政治化
  • ダム貯水池の泥土--土砂堆積
  • 土砂の旅
  • 地質の緩和
  • 土砂放出、土砂吐き、浚渫の可能性
  • ダム誘発地震--地震の原因となるダム
  • 鉄壁のダムの倒壊--ダムの安全性
  • 曖昧な統計
  • 予期される災害の発生
  • ダムの寿命--ダムの老朽化と解体
第5章・空手形--大規模ダムの曖昧な便益
  • 生み出される危険と債務--水力発電
  • 誇張されているエネルギー
  • 潜在的には再生可能なのであるが、非持続的なエネルギー
  • ダムは救世主なのか?--水力発電と地球温暖化
  • 静止するダム、変化する気象
  • 過大な幻想--洪水防止
  • 洪水を防止するための冠水
  • 飲むのには多すぎる--ダムと公共給水
  • 船舶航行の遮断--ダムと河川輸送
  • 失われた便益--貯水池漁業
  • 貯水池の観光利用--ダムとレクリエーション
第6章・失われた楽園--ダムと灌漑
  • 灌漑の類型と水源
  • 台無しにされた土地--灌漑と土壌悪化
  • 下流への排水
  • 緑の革命の停滞
  • 大規模灌漑の社会的影響
  • 灌漑と蓄財
  • 灌漑と共有地の囲い込み
  • 灌漑と栄養失調
  • 大規模灌漑の技術的・経済的失敗
第7章・集水域の賢明な利用
  • 水管理のための土地管理
  • 保護と回復
  • 洪水管理
  • 大規模ダムを造らない形での乾燥地農業
  • 雨水の収集
  • 洪水後の収穫
  • 住民ダム
  • 地下水の開発
  • 伝統的な転流施設
  • 現代の灌漑--将来への担保
  • パイプを敷設し、川を守る
  • その他の給水技術
第8章・エネルギー--革命なのか破局なのか?
  • より明るく、より少ない電力
  • 当面は天然ガスで
  • 再生可能エネルギー源の利用増
  • 太陽エネルギーの利用
  • もっとも古くから使われている再生可能エネルギー源--バイオマス
  • 蓄電問題の解決法
  • 水力発電の規模縮小
  • 襲われる宮殿
第9章・企業が応用し、人間が順応する--ダム建設の政治経済学
  • ダム建設のイデオロギー
  • 真昼の暗黒--ハイ・アスワン・ダム
  • イデオロギー一色のダム
  • ダムと権力支配
  • ダムと「豚肉争奪」政治
  • 大義を有しないテクノクラート--ダム建設の官僚機構
  • 社会活性化の先導集団?--ダム建設企業
  • 関連企業との結び付き--寄生産業
  • 費用負担者--ダムと「援助」
  • 国際的な「豚肉争奪」
  • 無理解と威嚇--ダム建設業界の対応
  • 応報--大規模ダムの経済学
  • ダムと債務
  • 無辜の楽観主義者?
  • 機会の喪失
  • 民間の悲観論者
第10章・「私たちは、立ち退きません」--世界的に広がるダム建設反対運動
  • 景観と税金--アメリカにおけるダム反対運動
  • 最大の罪業
  • 巨大ダム建設の愚行の終焉
  • タスマニア州の原生林保護をめぐる逮捕騒動と回復運動
  • 東ヨーロッパ--ダム反対運動が、体制変革運動となった事例
  • 兎が熊を倒す時
  • 戦士と労働者の反撃--ブラジル
  • 悪影響を受けた人々対ダム建設者
  • クワイ川をめぐる攻防--タイ
  • 土地への執着--インドにおけるダム建設への抵抗
  • 長期的な闘争
  • 国際的な戦線
  • インドでの見直しの長い道程
  • 世銀融資の中止以降
  • 世界的規模でのダム反対闘争
あとがき・ダム建設から集水域管理へ
トップページへ