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ヒットラーでも死刑にしないの?

【書評再録】


●朝日新聞「ひと」欄(1997年3月5日)=「死刑は国が法律にのっとって行う殺人」との思いを出発点に、15年間、議論を重ねたうえでの廃止論。講演会で年配の女性から問われた言葉をそのまま題名にした。
「死刑によって遺族が得られる満足は、おそらく私たちの想像よりはるかに小さい。第三者がまるで被害者や遺族のために死刑をするようにいうのはおためごかしだ」
むしろ、国による経済的な補償、やり場のない怒りや絶望感から抜け出せるようなカウンセリング制度の充実が遺族への慰めや救いにつながる、と説く。

●信濃毎日新聞、京都新聞ほか評(1996年12月7日)=死刑問題を考えるときにぶつかる論点はほぼ網羅されており、「人間は生きたい」ということを情熱的に肯定しようとする千夏さんの思いが、率直に伝わってくる。
被害者の遺族のために実際に必要になるのは、精神的ケアと犯罪被害への補償だが、「そうした実効ある思いやりの施策はすごく立ち遅れ、死刑でお茶を濁している」と指摘する。
死刑廃止運動の参加者の中には、元拘置所の看守たちも多い。毎日付き合って顔なじみとなった人間を自分の手で殺さなければならない看守たちは、仕事の内容を家族にも話せないという悩みを抱えており、「死刑制度のもう一つの被害者」。千夏さんは「そんな仕事を人に押し付ける権利は誰にもない」と声を大にする。

●北海道新聞評(1996年12月8日)=死刑廃止論への疑問に、著者一流の常識を積み重ねて回答。「正義の殺人を認める限り戦争も続く」「被害者救済には報復より報道の見直しと補償を」と説く。凶悪犯の人権を認めない「素朴な感情」の底の未熟な人権感覚に気づかされる。

●教育新聞評(1996年11月28日)=「死刑廃止」についてなるべく平易なことばを用いて語ったものである。
「生きること」「生命」を大事にする人だからこその思いが伝わってきて、説得力のある死刑廃止論となっている。

●日刊ゲンダイ評(1996年12月19日)=参議院議員当選当時から「死刑廃止」を表明する著者。極刑は国家が法律にのっとって行う一種の殺人であり、犯罪抑止の効力もないと訴える。社会が死刑を受け入れる理由、ヒトラーのような人間にも適用すべきでないと主張する根拠、被害者の人権と家族の苦悩について、冤罪の危険性など、犯罪と極刑の問題を多方面から分析。一般常識に基づいて分かりやすく展開した死刑廃止論。

●ふぇみん評(1996年12月15日)=著者のみずみずしい感性と人間の生への情熱に裏うちされた死刑廃止論は、考えぬかれたやさしい言葉で、死刑を丸裸にする。
第三者の報復感情についての洞察がすごい。死刑を許している社会の人権感覚のぜい弱さを活写する。
子どもにも読んでほしい極上の人権論でもある。

●NCCD JAPAN(全国犯罪非行協議会機関誌)評=俳優、歌手、TVタレントとして活躍する一方、死刑廃止運動など市民運動を続けている著者の本格的な死刑廃止のための著書が出版された。
表題は奇抜であるが内容は地味で、しかも著者自身の日頃の思索がすんなりと語られていて、読者にとって改めて死刑についての真摯な著者の想いを知ることができる。
130ページ余りの小冊子であるが、長年の蓄積のせいで、さすが奥深いものがあり説得力がある。
本著がこれからの死刑廃止市民運動にとって心の支えとなることは間違いない。専門家だけでなく、ひろく市民の愛読書となるはずである。

●出版ニュース評(1997年1月上旬号)=「死刑をなくしたい」という思いは、やがて確固たる死刑廃止論にたどり着いた。
本書は、それを具体的に展開したもので、死刑は殺人なのですか? ユダヤ人を大量虐殺したドイツの独裁者ヒットラーでも死刑にしないの? 殺された人の人権はどうなるの? 家族が殺された場合でも加害者の死刑に反対するのか? といった死刑肯定者から出された意見に応える形ですすんでいく。

●読書人評(1997年2月28日)=死刑存廃の論議に是否される、“死刑は殺人か?”“ヒットラーでも死刑にしないか?”の意の章立てのあとに“殺された側の人権はどうなる?”との三章以後は、国家/死刑産業から離床すべき、殺した側と殺された側の関係へと論述され、5章では社会学的な精神分析理論にもとづくとみられる、被害者へのカウンセリングシステムの要がのべられている。

●毎日中学生新聞評(1998年7月24日)=著者の中山千夏さんが、講演先で受けた質問をタイトルにしたという。
この問いに中山さんは「そうだ」と答える。
国による殺人、加害者と被害者の人権、被害者の感情……問題の一つひとつに中山さんは答えていく。

●FORUM90評(1996年11月号)=具体的な死刑支持論にぶつかるたびに、いつもふらついてしまう廃止への気持ちに、一本の明るい道筋を教えてくれる本が生まれた。
死刑賛成論者に言い返したいと考えている人が、この本をアンチョコがわりに読むのも良い。自分の死刑廃止論をもう一度クリアにしたいと思う人にも役立つ。
そして、「死刑はないほうがいい」とは思うけれど……と、揺れる気持ちの人たちに一読をお勧めする。
死刑廃止運動への風当たりが強い昨今、まさにタイムリーで心強い本ができた。

●放送文化評(1997年2月号)=難しい言葉を一切使うことなく、わかりやすく死刑廃止論を述べいる。
彼女の論はきわめて明快である。
この本は、じっくり腰を据えて考えなければならない本質的な問題もあるのだという警鐘でもある。

●週刊法律新聞評(1997年4月4日)=「死刑は国家による殺人だ」「被害者感情を乗り越えられない以上、存置すべき」など、廃止派と存置派に分かれ、両者の妥協点が見出せないでいる死刑制度に関して、廃止論者側からその是非について論点を簡潔に整理し、新しい死刑廃止論を展開したエッセイ集。
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