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悲劇の島・東チモール

【書評再録】


●出版ニュース評(1990年6月上旬号)=著者は、資源地質学を専攻する立場から東チモールの地質調査を試みるが、それも単なる学術調査記録に終始せず、現地の人びととのふれあいから屈辱の歴史に思いをめぐらし、大国のエゴイズム・責任を問いただしてゆく。ともすれば国際問題の片隅に置き去りにされた感のある東チモール問題であるが、そこには重要な南北問題・民族問題、そして豊かな自然とは何かがつきつけられているのだ。

●地球科学評(1990年9月)=本書は、著者が1974年に石灰岩に伴う燐鉱石の調査で東チモールを訪れてから、地質をはじめとする東チモールの自然と、そこに住む人びとの魅力にひかれ、やがて東チモールの独立運動に共鳴するようになるまでを、三章だてでつづった異色の地誌である。

●地団研そくほう評(1990年6月1日)=著者は1974年夏に燐鉱石その他の地下資源調査のため、約3週間ほど東チモールの各地を訪れている。この島の地質の面白さと人情の暖かさにひかれた著者は、翌年再び訪れようとしたときにはたまたま東チモールは政情の変動期にあったため、島を訪れることはできなかった。
1975年に起こったクーデターには、同島の住民に大きな悲劇をもたらしたことを、新聞紙上で知った著者はポルトガル領下にあった400年の住民の歴史や、太平洋戦争中の日本軍占領の実態を追いながら、住民の自治権と平和な生活の確立を願ってきた。著者は本書の中で、東チモールの地質と風土と生活を説きながら悲劇の島の中で、チモール原住民の自治権の確立を強く訴えている。とくに、太平洋戦争中に原住民に与えた損害を賠償することなく、経済本位の立場にたち、原住民のための責任ある対応を回避した日本政府の態度に憤慨していることが注目される。
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