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生きる歓び イデオロギーとしての近代科学批判

【書評再録】


●エコノミスト評(1995年3月28日号)=生存のためのもう一つの科学技術論。
「転換期の技術」の思想的根拠を問う、一つの時代的成果であり、エコロジー破壊の多様な体験のなかから、開発過程に潜む共通の原因と、開発を正当化する特殊な自然観が浮かび上がってくる。
評者にとって、第三世界の女たちの生存を可能にし、したがって公正と平和を可能にする思想と行動を明らかにした本書は、そうした意味で「生存のためのもう一つの科学技術論」というべき性格をもっていると考えたい。
最後に、一読して、印象に残った二つの点について触れておこう。その第一は、本書にはインドに根づいたマハトマ・ガンジーの伝統が一貫して流れているということである。第二は、その「先駆的な洞察と実践」により、もう一つのノーベル賞といわれる「ライト・ライブリフッド賞」を受けたことである。彼女の世界的な評価が端的に示されたというべきであろう。
西欧の科学技術と経済システムをひたすら導入して「国益」を追求し、今日の経済大国に成り上がったわが国が、今後、東アジアの辺境で、世界から孤立しないためにも、私たちは、第三世界の農村に生きる女性たちの声にもっと耳を傾けるべきである。

●出版ニュース評=さまざまな悲惨が語られ、それに対して屈しない女性原理が、高々と掲げられ、女たちのエコロジー運動の知恵、価値、生きる喜びが記されている。

●本の花束評(1999年2月号)=ヴァンダナ・シヴァは環境NGOの論客として世界的に知られるインドの在野の女性研究者。30歳で、「科学・技術・自然資源政策研究財団」を設立し、インドの女性たちの人権と環境を守る草の根運動に20代から参加してきた。本書は彼女の代表作。
「近代」農林業の品種の画一化、農薬乱用、砂漠化などの問題点を明らかにし、在来の農林業の再評価を訴える。そして、間違った開発の背景をなす西洋近代科学の自然観と男性優位の社会システムを批判し、環境破壊と戦う女性たちの活躍を描きつつ、「女性原理の再興」を提唱する。遺伝子組み換え技術の乱用が始まった時代の必読書だ。
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