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家族がガンにかかったとき

【内容紹介】●本書「まえがき」より


 年間21万人以上の人が、ガンで亡くなっています。この数字は、1年間にわが国で亡くなる方の4人に1人に当たります。実に交通事故死のおよそ19倍におよびます。一組の夫婦で考えますと、その両親を合わせて4人になりますが、そのうちの1人はガンで亡くなるということです。言い換えれば、人間の死のかたちとして最も普通のものが“ガン死”ということなのです。こうなっては逃げてばかりはおられません。いつみなさんのご家族がガンにかかるかもしれないのです。
 ガンという病気の実態、ガンにかかることとはどういうことか、ガンになったらどうしたらよいのか、こうしたことを考えておくことは決してむだではないと思います。そのことが誰かがガンにかかったとき、ご家族そして本人をどれほど助けることになるかしれないからです。
「本人のショックを考えると、本当のことはとても言えない」というのが、ガン患者をもったときの家族の率直な気持ちだと思います。その結果、ガンと診断された時点から本人には正しい情報が伝わらず、医者や家族とは嘘の関係が進むことになるのです。自分のからだでありながら、なんのために、どんな治療が行われているのかわからない状態におかれるのです。そんなときから患者さんは、疑惑と不信のなかでしだいに孤独の世界に閉じこめられていくのです。嘘を通しての人間関係は、家族も医者も心を開いた対応が難しいのです。すべての問題の出発点は、診断がついた時点にあるのです。その時に真実を隠してしまうことが、その後の大きな問題に結びついてゆくのです。
 私は医者になって17年目を迎えておりますが、最初の10年というものは、問題を正面視せずに逃げてばかりいたと思います。ガンの告知を日常的にするようになってから、診療は以前より大変になりました。今までよりも多くの配慮と時間が必要になりました。しかし、本当に心を開いて患者さんと付き合えるようになりました。その結果が、巻末のアンケート調査です。これにより、患者さん自身やご家族がどう受け止めておられるのかを直接確認することができたと同時に、気づかなかった多くのことを教えていただきました。
 本書は、そのような背景から生まれました。ともかくこうした事実を知ったうえで、ご家庭の事情に応じたスタイルで、的確な判断で最前の道を歩むことにお役に立てば幸いです。
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