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野鳥の生活シリーズ

【内容紹介】野鳥の生活[I]「まえがき」より


 1羽の小鳥がそこにいること、それは人一人がそこにいるのと同じ重さがあります。
 皆さんと同じように家族のくらしがあり、大人になれば親から独立したり、結婚もして子供を残します。親は夫婦仲がよく、子供に強い愛情を示します。仲良しグループもあり、出会うとすぐけんかになる相手もいます。またヤクザ映画のようななわばり争いもいたします。皆さんのお父さんのように一定の職業(鳥ではきまった食べ物)があって家族を養い、常に交通事故や病気(鳥ではキツネやタカ)から一家を守ります。またある場所に住みついて行動範囲がきまってきます。そこで、そこの風土に強く影響されて東北人、九州人、関東・関西人というような独特のなまりやくらし方が生まれています。
 また最近では、これも人と同じく、公害や自然破壊に苦しめられています。ビル街ではスズメがまっ黒くすすけていますし、ツバメはすでに姿をみせません。一日も早く都会に自然を取り戻して、地方のようないきのよいスズメがみられるようにしたり、ツバメが戻ってくる都会にしたいものです。そのような都会になって、はじめて、人びとも健康的なくらしに戻れるのです。
 いままでは、野鳥にであっても何となく見逃している人が大部分でした。あるいは鳴声や姿の美しいのに感心する人がいても、景色の一部として見ていました。次の段階に進んでも、図鑑を手にしながら野外で小鳥の名前を覚えて楽しむだけでした。皆さんはさらに一歩進んで自然界に自由にくらしている野鳥の生活ぶりを調べてみなければなりません。
 この本は野鳥の生活について、小学校や中学校の先生方が種類ごとに分担して書かれています。
 小鳥の生活の調査は並大抵ではありません。けれども一生懸命に努力しているうちにその生活がわかってくると、これほど面白い仕事や、楽しく愛らしい動物もありません。この本を読みすすむにつれてそれらがわかってくることでしょう。また、種類ごとに驚くほどのくらし方のちがいがあります。それらがどうして生じたのかと考えながら、また、つねに人に連なる進化の鏡に照らしながら読んでみてください。
【内容紹介】野鳥の生活[続]本書「まえがき」より

 花が咲き、新緑も増してくると、鳥たちの繁殖の季節です。私たちは野外に出ることで多忙を極めます。だが、1年中でいちばん充実した、また幸せいっぱいの季節です。私たちはめざす鳥を見つけると、何よりも先に雌雄を判別します。雄と雌とで、その行動に大きなちがいがあるからです。また社会のしくみが、その関係によって大きな影響を受けているのです。
 人や動物の全般にも通ずることですが、鳥の社会のしくみは、個体維持と種族維持の二面から成り立っています。個体維持については、「野鳥の生活[I]」の中で食物および天敵と防衛の章としてすでに扱っています。
 そこで、この本では残された種族維持に焦点を合わせました。そして雄と雌との関係について、特につがいと多妻の章を設けました。
 皆さんは、この本を読みすすむにしたがって、どの鳥でも雌雄が繁殖仕事をみごとに分けあい、緊密に協力しながら重労働によって卵やヒナの世話をしているのに、深い感銘を受けることでしょう。また一方では、種ごとに大きくちがっている雄と雌との関係に驚かれると思います。
 皆さんは、それらが社会のしくみにあたえている影響や、種ごとに異なる社会のしくみの意味はいったい何なのかについても、つねに深く考えながら読んでいってほしいと思います。
 野鳥の行動のなかには、一見して理屈に合わないように見える行動や、それと全く反対に、実に合理的に見える行動を発見することがあります。私たちは、鳥世界のそれらの出来事を、ただちに人間世界で私たち自身が経験しているものと全く同じに考えて、擬人的に説明することが多いようです。検討に値するそれらの行動のいくつかを拾って、この本の中にさまざまな行動という章をあえて設けました。皆さん方の研究を切に待ちたいと思います。
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