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ヤマネって知ってる?
ヤマネおもしろ観察記

【内容紹介】●本書「本文」より


 「ヤマネって知っていますか?」と前に座っているタクシーの運転手さんに聞くと、「おっ、川にいるヤマメのことだろう」とか「九州のヤマネコだ」とか「タヌキのような動物だったかな」などという答えが戻ってきます。ここは、東京の街の中。でも、大阪や九州で尋ねても、返事は同様です。10人に聞いても9人は知りません。つまり、日本特産で、日本に1種類しかなく、国指定の天然記念物で、レッドデータリストの準絶滅危惧種であるヤマネを知る日本人は少ないのです。
 ヤマネは、リスやネズミと同じ齧歯類で、目がくりっと大きくてかわいい動物です。ネズミと異なるのは、しっぽにふさふさとした毛が生え、背中には1本の黒い筋がきりっとあること。体重は18グラムほどで、鶏卵50グラムの半分もありません。ヤマネの暮らしている場所は、森の木の上で、夜行性です。口からお尻までの長さが8センチと小さいので、かりに自分の家の裏山に住んでいてもわからないのです。
 ヤマネは、冬になると、体を毛糸のボール玉のようにして冬眠します。そんなヤマネに向かって「起きろ!」と大声で叫んでも動きません。丸いまんまです。
 世界には26種類ほどのヤマネの仲間が、ヨーロッパ、ロシア、アフリカ、中央アジア、中国、そして日本に生息しています。「シマウマ」が“縞のあるウマ”であるように、名前はその特性を表すことがあります。ロシアでは、ヤマネのことを「ソーニャ」といいます。かわいい美人を想わせる名前ですが、意味は「ねぼすけ」です。ドイツでは、ジーベンシュレーファーといい、意味は「よく眠るもの」。イギリスでは、ドゥーマウスといい、「ねぼすけなネズミ」の意味で、『不思議の国のアリス』の物語の中でも「ぼうし屋」や「三月ウサギ」にクッションがわりにされても、熱い紅茶をかけられても、ポットにつめこまれそうになっても、平気で眠っています。日本では漢字で「冬眠鼠」と書きます。このように世界中の人びとが、ヤマネのことを「ねぼすけ」と思っているようです。
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