はじめに

「米ぬかオーガニック」とは…………小竹幸子
　　なぜ「米ぬか」なのか？
　　米ぬかオーガニックとは
　　生き物たち、植物たちの多様性のある庭に


一坪の地面でも元気にバラ咲く土着菌いっぱいの庭…………梶浦道成（東京都）
　　地面はわずか一坪。だから、壁を庭に
　　壁庭は、13年前から無農薬
　　無農薬の壁庭は、都心の小さな大自然
　　庭土の生命力を、ミクロの視点で考えてみる
　　庭には地元の土着菌
　　土着菌発酵米ぬか＆有機マルチで、土から元気に
　　コラム／新芽の季節は、米ぬか花咲か爺さんまき
　　コラム／ゾウムシ疑似天敵作戦
　　コラム／土着菌発酵米ぬか＆有機マルチの施し方
　　コラム／土着菌発酵米ぬかのつくり方


暑い地方でも楽しめるオーガニックなバラの庭…………松本隆司（長崎県）
　　僕のバラ栽培の工夫
　　暑い地方での地植えのバラ栽培12カ月
　　木酢液について
　　コラム／ニンニク・トウガラシ液のつくり方
　　コラム／米ぬか発酵肥料のつくり方
　　コラム／暑い地方の僕のおすすめバラ


ベランダのコンテナ栽培こそオーガニックで…………佐藤和彦（東京都）
　　お気に入りはなんといってもオールドローズ
　　コンテナ栽培での工夫１　施肥の仕方
　　コンテナ栽培での工夫２　基本の用土
　　佐藤流オーガニック・スプレー
　　オーガニック・スプレーの効き目
　　木酢液の使用
　　どんな鉢を使っているか
　　ベランダ栽培ならではのポイント
　　コラム／家庭で簡単にできる乳酸菌液
　　コラム／米ぬかすりすり作戦


生き物たちと暮らすバラ庭…………神吉晃子（東京都）
　　庭の環境に合った植物を植える
　　バラをめぐる生き物たち
　　野鳥を庭の常連に
　　生き物たちとかかわってこそバラは美しい
　　コラム／オーガニック・ローズの愉しみ


野菜や果樹と一緒に楽しむバラの庭…………中村敦子（埼玉県）
　　初めに畑ありき、果樹ありき
　　そしてバラも植えてみたけれど
　　楽しくやろうよバラ栽培……「ま、いっか」
　　田舎のばあちゃんの庭にはバラも咲いてます
　　庭にまいているもの
　　私のお気に入りのバラたち
　　コラム／オーガニックなバラ庭の果物レシピ


樹木の庭でバラ栽培も自然のままに…………大石　忍（神奈川県）
　　樹木のおかげで庭が里山に
　　バラをどこに植えたらよいのか
　　日陰の庭のメリット・デメリット
　　私のバラ栽培
　　生ごみを土に還す
　　日陰のバラの剪定ポイント
　　コラム／生ごみを土に還す＊土の上に置く
　　コラム／生ごみを土に還す＊土に埋める
　　コラム／日陰の庭の私のおすすめ品種


生ごみ発酵肥料で健やかに育てるオールドローズの庭…………片寄敬子（茨城県）
　　スギナだらけの庭から
　　パーゴラに導かれて
　　無農薬でバラを育てる
　　虫対策
　　米ぬか、炭、木酢液を使って
　　無農薬でバラを育てて
　コラム／米ぬか発酵肥料のつくり方
　コラム／米ぬかで発酵させる生ごみ堆肥のつくり方


自家製馬糞堆肥で土づくり。
北国のオーガニック・ローズ・ガーデン…………中村良美（福島県）
　　オーガニックな庭づくりというと……
　　北国の庭
　　欲ばりさんの庭
　　おすすめのバラ
　　自然の生態系に近づける庭づくり
　　チチンプイプイの魔法の粉
　　自家製馬糞堆肥のアレンジレシピ
　　ポイントをおさえた省エネガーデニング
　　コラム／自家製馬糞堆肥のつくり方


自然とともに、循環型ローズ・ガーデンをめざして…………矢崎恵子（山梨県）
　　私のおすすめバラ
　　庭で出た枝や落ち葉の再利用
　　米ぬか発酵生ごみ堆肥づくり
　　米ぬか発酵生ごみ堆肥の使い方
　　嫌気性ぼかし肥料
　　コラム／嫌気性ぼかし肥料のつくり方
　　コラム／庭と生態系


米ぬかまきと有機物マルチで生きている土づくり…………小竹幸子


おわりに

「バラを無農薬で育てたい！」
　これは、この本に集った仲間たち全員の強い思いです。


●十人十色のバラ庭づくり

　今から15年ほど前のこと、無農薬でバラ栽培を志す全国のバラ仲間がインターネットでつながりました。マニュアルのないところからのスタートでしたが、さまざまな試行錯誤を繰り返しながらみんなで成果を報告し合い、実践を積み重ね、やがて、無農薬で美しいバラ庭を維持することは決して特別なことではないと、仲間の誰もが感じるようになりました。（その時から、このような本を世に出すことが私たちの次の夢になりました。そして今、それが実現したというわけです！）

　私の実践については、『無農薬でバラ庭を〜米ぬかオーガニック12カ月』（築地書館）で詳しく紹介しましたので、すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

　しかし、無農薬のバラ庭づくりの方法は、私のやり方がすべてではありません。

　マニュアルのない中、みんなで試行錯誤しながら、自分流の無農薬のバラ庭づくりの方法を見いだしてきたのですから、十人いれば十通りのやり方があるのです。

　この本では、私以外の９人の仲間たちの実践について、詳しく紹介しています。



●十通りとはいうけれど……

　十人十色というと、一人ひとりまったく違う栽培法であるかのように感じるかもしれませんが、じつは、私も含めて仲間たちみんなに共通していることがいくつかあります。

　○善玉菌でいっぱいの、土づくり、庭づくりをしていること

　○虫や生き物たちを観察し、よく知っていること

　○バラだけではない、多様性のある庭をつくっていること

　これらのキーワードで仲間たちの実践をひもといていくと、きっとみなさんのお庭に合ったオーガニックなバラ庭づくりのヒントが見つかると思います。



●それぞれの実践のポイント

　９人の仲間たちの実践を簡単に紹介しましょう。

　この本の編者の一人、梶浦道成さんは、都会の真ん中で欧州の街角のように美しい一坪・壁バラ庭をつくっています。長年、無農薬でのバラ栽培法について実践を報告し合い、「米ぬかオーガニック」もともに追求してきました。栽培法のポイントは、土にすむ善玉菌で発酵させた米ぬかや有機物マルチによる土づくりと、都会の壁庭を訪れる虫や生き物たちをよく観察することで得られた防除法です。おおらかで豊かな感性にもとづいた梶浦さんの庭づくりは、いつまでも私たちの憧れです。

　九州に住む松本隆司さんは、医師という忙しい仕事のかたわら、自宅の壁をバラで埋めつくし、南国特有の高温多湿な環境に負けないバラ庭を無農薬で実現しています。栽培法のポイントは、南国の虫の害に負けない、手づくり散布エキスの工夫です。同時に、市販の種菌を使った米ぬか発酵肥料と地域の資材を活かした有機物マルチで、土づくりに力を入れています。さすがと思わせる力強い栽培法です。

　佐藤和彦さんは、都会のマンションのベランダで、オールドローズを中心とした「空中バラ園」を営んでいます。鉢やベランダでの栽培を考えていらっしゃる方には大いに参考になるかと思います。栽培法のポイントは、佐藤流オーガニック・スプレーと手づくり菌液でバラを守り、鉢土を健康に保つために馬糞堆肥を工夫して使っていることです。細やかに心を配り、ちょっと手間をかけるだけで、ベランダという限られた環境でも豊かで美しいバラたちと暮らせるというのは、嬉しい報告です。

　東京の郊外に住む神吉晃子さんは、オーガニックの精神を語っています。小さなころから生き物好き・虫好きの彼女の目は、庭にすむすべての生命に対する慈しみにあふれています。栽培法のポイントは、庭の生き物たちを観察し、誰がどんな役割をしているかをよく知っていることです。また、簡単な仕組みの生ごみ堆肥の機械と米ぬかを使って、有機物を庭に還しています。日々の小さな労力で得られる豊かな庭の楽しみに、心から癒されます。

　埼玉県の中村敦子さんは、果樹や野菜と共生する、自然体のバラ庭をつくっています。敦子さんにかかっては、雑草すら大切な庭の一員！　おおらかで楽しいバラ庭づくりです。栽培法のポイントは、「まくのが好き」というバラの活力剤となる散布液のブレンドの工夫です。また、手づくり菌液や米ぬか、馬糞堆肥による土づくりも簡単で効果的。思わず時を忘れるバラ庭です。

　大石忍さんも、無類の生き物好きです。都会の郊外で、バラだけでなくたくさんの犬や猫たちとともに暮らしています。彼女の庭は樹木の庭です。日当たりが大切なバラ栽培では不利な条件と思われがちですが、品種選びや日々の観察によって見事にクリア。栽培法のポイントは、日々の生ごみをそのまま庭に還す土づくりと、環境に合った育て方の工夫です。無農薬は動物たちにも安心です。

　水戸市の片寄敬子さんは、オールドローズを中心とした素晴らしい香りのバラ庭をつくっています。栽培法のポイントは、生ごみでつくる米ぬか発酵堆肥と、庭の残渣による有機物マルチ、発酵肥料や炭、木酢液を使った微生物いっぱいの土づくりです。キッチンから出る生ごみを米ぬかで発酵させ、庭の残渣と一緒に土の上で分解させてしまいます。発酵肥料づくりも今やお手のもの。豊かな土づくりに支えられて、６月初旬にいっせいに花咲く片寄さんのバラ庭は圧巻です。

　福島県の中村良美さんは、美しく調和したバラと宿根草の庭をつくっています。寒冷地のバラ栽培ですが、季節の歩みに逆らわない自然体の庭づくりです。栽培法のポイントは、自家製馬糞堆肥を使った有機物マルチによる土づくりです。ちょっとひと手間かけるだけで、年間通してとてもラクにオーガニック栽培ができるというお手本のような実践です。バラと草花の取り合わせも見逃せません。

　山梨県の矢崎恵子さんは、自然あふれる地域の環境を活かし、循環型の庭づくりをしています。バラだけでなく、樹木や山野草の生い茂る庭はまるで別天地です。バラの生命力を信じ、適切な世話をすることで、神秘的ともいえる美しいバラ庭を実現しています。栽培法のポイントは、庭の残渣や生ごみを土に還す循環型の土づくりです。また、発酵肥料の新しい方向性として嫌気性の微生物を使う方法を試みています。チャレンジ精神に富んだ実践は、新しい栽培法へのヒントとなるでしょう。



●夢がかなうとき


「夢は、あきらめなければいつかきっとかなう……」といいますが、バラのオーガニック栽培という夢は、本書に集う仲間たちの実践を見る限り、すでにもう実現したといえるのではないかと思います。

　そればかりか、バラ庭を維持するのに、オーガニックのほうがかえって簡単だったり、ラクだったりするのです！（いくつかのポイントをきっちりと押さえたうえでのことですが。）

　本書にちりばめられた、バラのオーガニック栽培のためのヒントを参考に、みなさまも、どうぞ、自分流の無農薬のバラ庭づくりの方法を編み出してください！



編者を代表して　小竹幸子

梶浦道成
　　〈カジヴィジョン〉http://blog.livedoor.jp/kajivi/

松本隆司
　　〈趣味は園芸の農芸家〉http://takasisi.at.webry.info/

佐藤和彦
　　〈Sato Nursery's Blog〉http://stnsr.exblog.jp/
　　〈rosarium in the sky〉http://skyrosarium.blog69.fc2.com/

神吉晃子
　　〈ココの日々〉http://totobebe.exblog.jp/

中村敦子
　　〈Acchan's ROSE GARDEN〉http://pompeechan.blog17.fc2.com/

大石忍
　　〈りきの毎日〉http://rikiaru.exblog.jp/

片寄敬子
　　〈やさしい庭〉http://telesarose.blog98.fc2.com/

中村良美
　　〈Golden Wings〉http://poco0704.blog102.fc2.com/

矢崎恵子
　　〈ROSASOLIS〉http://bacillussa.exblog.jp/

小竹幸子
　　〈庭造りの愉しみ〉http://yukikoo.web.fc2.com/

鵜飼寿子（巻頭写真提供）
　　〈Days in Focus〉http://hisako21.blog6.fc2.com/