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スパルタの秋

【書評再録】


●読売新聞評(1993年9月30日)=ゼウス神の落としダネといわれるスパルタの王女ヘレネー。彼女の波乱に満ちた生涯を歴史考証と仮説で描き上げたロマン。ホメロス以来の英雄史観に女性の視点から挑んでいる。

●産経新聞評(1993年10月14日)=ギリシャ神話の世界に基づく歴史小説。トロイ戦争の原因とされてきた絶世の美女、ヘレネーが、運命に翻弄される女性ではなく意思を持った女性として描かれている。ホメロスの「イリアス」に展開される英雄武勲を、壮絶な悲劇ではなく男性社会の愚挙という観点で描き切る。

●教育新聞評(1993年11月15日)=歴史小説的な面白味があって、ふしぶしに教訓が散らばっている本だといえよう。

●わーるど・ブックガイド評=本書は、ギリシャ神話随一のスキャンダラスな悪女、ヘレネーとクリュタイムネーストラにスポットを当てて、2人の女性の人物像をあぶり出す。ヘレネーは、男性社会の壁を越えた大胆な女性だという解釈は、斬新で画期的だ。
著者は、男たちの争いに翻弄されながらも懸命に闘った女たちの陰のドラマに着目し、もう一つのギリシャ神話を描き出している。
トロイ戦争から数千年を経たいまでも、悲惨な争いを続ける人類。女や子どもをより大量に残酷な方法で殺戮可能になったことが、果たして文明の進歩といえるのか、と問う著者の叫びが耳に痛い。

●日刊ゲンダイ評(1993年10月7日)=独自の視点でギリシャ神話を描いた人気シリーズ第三作はスパルタの王女ヘレネーの生涯を描く。ホメロスの叙事詩を丹念に歴史考証し、この戦争が一女性をめぐる戦いではなかったという仮説のもと、見事に神話の世界を現代によみがえらせている。

●聖教新聞評(1993年9月22日)=トロイ戦争といえば、まず頭に浮かぶのはアキレウスやアガメムノンといった英雄・武将。けれど、争奪の的となった美女ヘレネーの視点でながめてみれば……。10年の長きにわたり、国力を衰微させるだけだった愚かな戦いの一面が、くっきりと見えてくる。精緻な考証と、人物の内面に分け入る想像力で、あの歴史ドラマを迫真の筆力で物語る。

●桜楓新報評(1994年2月10日)=壮大なギリシャ神話の世界を詳細な考証と推理によって見事に読者の目前に展開している。単なるギリシャ神話のフィクションの世界に終わらず、時代背景を知るための略年譜や、登場人物関係図、また「ヘレネーの神話と歴史」という丁寧な付録まで付いているので、読後感を十分に整理できる。
なお、過去、長年のガイド生活の体験からと推測されるのだが、地理、風土的な描写も的確で安心感がもてるのも特色といえよう。
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