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ソ満国境15歳の夏

【書評再録】


●月刊現代評(1998年11月号)=むかし「満蒙は日本の生命線」という国策があった。それが、いかなる悲惨な終末をみたか、本書は当時15歳でその場にいた著者の実体験記である。
15歳の脳髄に記憶されたものの鮮明さに、まず驚かされる。逃げまどう道で出会う破壊された橋、それを壊し、鉄道で真っ先に逃げたのは誰だったか。取り残された開拓団の女や子どもがどんな目にあったのか。精鋭のはずの関東軍は「ボロをまとい敗残兵そのもの、中には膝から下の片足を失ってセメント袋で腿を包み、松葉杖をついて……」と少年の目が捕らえたものが活写されている。
当時と同じ体質の官僚に運命を任せている今、身につまされて本書を読むのは私だけだろうか?

●日中文化交流評(2000年2月1日号)=敗戦直前の1945年、新京に学ぶ中学生130名がソ満国境に送り込まれた。本書は敗戦の混乱、苛酷な捕虜生活を経て生還した著者の稀有な体験を綴った貴重な記録。著者は日本が中国を侵略し数多くの人民を殺傷、日本人民をも困難に陥れた責任は誰にあったのかという疑問を抱き続ける。その責任は、大義を振りかざし、都合の悪い事実は発表を延ばし、或いは歪曲し、責任を回避する「官僚の無責任性」であり、その習性は今日でもなお日本社会に横行していると警鐘を鳴らす。著者の平和への強い願いが、読者の心に伝わってくる書である。本書は、昨年の第三回自分史大賞コンクールに入賞した。
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