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カミキリムシの魅力 【内容紹介】本書「はじめに」より | |||
博物館という仕事がら、虫とは縁もゆかりもない人たち、とくにご婦人がたと虫の話をすることが多い。昆虫とかトンボとかクワガタとかはふつうに理解してくれているようだが、カミキリというとたいがいはカマキリと誤解されて話が通じなくなってしまう(仕方がないから、つとめてカミキリムシということにしている)。 世間一般では知名度は低くとも、こと昆虫趣味の世界となれば、カミキリはチョウに次いで愛好家が多い。少なくとも、トンボやカマキリの比ではない。甲虫の中のたかが一つの科でしかないカミキリが、どうしてそんなにも人気があるのだろう? 研究者によって若干の違いがあるが、日本産カミキリはほぼ700種強と推定される。推定としたのは、未発表の種が相当数あることと、私たちにまだ発見されていない種もあるだろうことを見込んでいるからである。実に日本産チョウ類の2.5倍、トンボ類の4倍に相当する種数である。 日本だけでこれだけたくさんの種類が記録されているのだから、分布ひとつとってもその解明は一筋縄ではいかない。それだけに新しく発見される知見も多い訳で、現在でも全国各地で数多くの愛好家が熱心に調べているのである。 本書は、その数多い愛好家の中でも、とくに特色ある人たちに登場願った。露木繁雄さんは分布相解明に、斉藤秀生さんはヒメハナカミキリ類に日の目を見させようと、入江平吉さんは南西諸島の相の解明にそれぞれ活躍してきたし、私はコブヤハズカミキリ類の不思議な分布像にスポットを当ててきたつもりである。 この4人とも好きでカミキリの世界に入り、いまだにこの世界から抜けられないでいる人たちである。いわばカミキリに魅せられてしまったわけだが、いったい何が魅力なのか。その辺のところを読み取っていただけたら、そしてそれゆえにカミキリの世界に深入してしまう人があれば、私としてはこの上もなくうれしく、また本書を世に出した意味もあろうかと考えるのである。 | |||
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