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沈黙をやぶって 子ども時代に性暴力を受けた女性たちの証言心を癒す教本

【書評再録】


●朝日新聞評(1992年11月25日)=沈黙せざるを得なかった人たちが声を上げた日本で最初の証言集。
森田さんは、米国のCAP(子どもへの暴力防止)トレーニングセンターのコーディネーターとして8年間働いた実績がある。勇気を出して手記を寄せた人たちにこたえるため、さらに次のステップを踏むガイド「心を癒す教本」を森田さん自身が最終章に書いた。
「これまで欠けていたのは、性暴力について被害者の視点から見ること。体験を言えずに苦しんでいる人たちが仲間をつくって沈黙をやぶり、心の傷を癒す第一歩を踏み出してほしい」と森田さんは話している。

●読売新聞「顔」欄(1993年1月28日)=「みんな、だれにも話すことができず、心の闇の中にしまい込んでいる。被害者でありながら、自分にスキがあったのが悪かった、というように思い込まされているんです。でも、苦しみから自分を取り戻すためには、沈黙を破ることが必要なんです」
じゅんじゅんと説く言葉に熱がこもる。
「カウンセリングという仕事に興味があって、軽い気持ちで入った」CAP(子供への暴力防止)センターで、身近な大人たちによる子供への虐待の深刻さを知った。以来、コーディネーターとして8年間、暴力や虐待の防止に取り組む。その体験から「子供に対する性暴力は日常生活の中では頻繁に起きている出来事です」と言い切る。

●時事通信全国配信記事・京都新聞ほか(1992年12月4日)=「誰にも言えなかった」を読んだ日本の女性ら150人以上から「今初めて話すことですが……」と、被害体験とその後をつづった手記が寄せられ、今回の編集が始まった。編集の過程で森田さんは「沈黙を破ることで自分の過去に出会い、心の傷をいやす作業を始めた女性たちに次のステップを語る責任がある」と感じ、22編の証言集に加え、当初の計画になかった心をいやすすべを詳述した「教本」を付けることにした。
「沈黙をやぶって」は子ども時代に被害を受けても語っていない(語れずにいる)人、実際に性的虐待のカウンセリングなどにかかわっているものの、実は実態を知らないでいる専門家に読んでほしい、という。

●共同通信全国配信記事・岩手日報ほか(1992年12月〜)=子どもの頃に性的暴力を受けた人たちの証言集が刊行され、体験者たちが初めて口を開いた本として話題になっている。
森田さんは昨年、米国の同様な被害者の証言集「誰にも言えなかった」を翻訳刊行。18歳から78歳までの読者から森田さん宛に100編以上の体験談が寄せられた。それに寄稿者の手記も加えて、女性22人の証言が同書に収録された。
この証言集自体が日本でも子どもへの性暴力が起きている証拠だが、日本でのこの問題の実態はほとんど把握されていない。子ども時代に負わされた心の傷に病む人に対する治療の場にも、問題はあるようだ。
「そういう体験を持った人たちにとって、自分の体験を語ることが体験をいやす第一歩です。自分の体験を見つめ、それを書くことで強い人間になれる人もいます」
でもなかなか、日本の状況では多くの体験者がそのように生きられるとは限らない。

●北海道新聞評(1992年12月24日)=児童相談所の職員や精神科医といった専門家の多くが「これはアメリカの話。日本でそんなことがあるはずない」という反応だったと言う。「手記を読むと状況はアメリカと変わらない。こうした事実があることをまず専門家に知ってほしい」
最終章には性暴力の現状や研究、心の傷をいやす方法が書かれ、巻末には子どもへの性暴力に取り組んでいる市民団体のリストも掲載している。
「性暴力を受けた人は、経験のない人よりも強く生きていける可能性がある。理解者、同じ経験をした人と出会うことによって、自分の置かれている状況を変えて欲しい」と森田さんは話している。

●クロワッサン評(1993年1月25日号)=子どもが大人から性暴力を受ける、この問題は日本でも、潜在化しているんです。
子どもの頃に大人から性的暴力を受けた体験を集め、森田さんは「沈黙をやぶって」を出版した。最終章には森田さん自身が「心を癒す教本」を書いている。性暴力とは、キスを無理強いされた、さわられた、見世物にされた、等。強姦に限らないし、必ずしも殴る蹴るを伴う行為を意味してはいない。加害者は親、親戚、兄弟、知人、教師……。
「これまで、この問題は専門家が書いてきた。被害者の視点から書かれてはいなかったんです。私は今度のこの本で体験者に言いたかったんです。あなたたちが専門家なんだ、あなたたち以外には本当にこの問題は語れないんだ」
だから沈黙をやぶろう、と。
「今の日本は、ケアがまったくない状態です。当事者同士が出会えば、彼ら同士がサポートグループを作れる。ネガティブな体験は、それを見つめ、取り組めるようになれば、他の人にはない力となる。この本は、私の熱いメッセージでもあるんです」

●女性セブン評(1993年4月8日号)=公の場で語られにくい、子どもへの性暴力。彼女たちの一人称による告白は、衝撃的です。

●音楽広場「子どもへの虐待防止を考える」特集(1995年1月号)=子どもへの虐待をさらに考える本として紹介。

●社会新報評(1992年12月28日)=近親者や知人から、また見知らぬ他人から性暴力を受けた女性たちが心の傷を癒す術もなく、自己喪失感をもったまま生きてきた苦悩を語る。だが単なる体験告白にとどまらず、子ども時代の自分をいとおしみ、現在の自分を肯定していく姿が見える。語ることが“いやし”となるという編者の視点が貫かれる。
森田さんは1982年から8年間、CAP(子どもへの暴力防止)トレーニング・センターのコーディネーターを務めた。終章では、被害者や、医者、カウンセラー、児童相談員、弁護士など性的虐待を扱う専門家に向け、性暴力の分析と理論、CAPの子どもへの暴力防止プログラムなどが紹介される。
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