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開化の築地 民権の銀座 築地バンドの人びと

【書評再録】


●鈴木美南子氏(キリスト新聞)評(1989年9月2日)=民権運動に生きる築地バンドの人々を紹介。
明治初年から開化の築地を根拠に、伝道、出版、教育に励んだカローザス夫妻と、その影響下に育った個性的クリスチャングループ、築地バンドの主要な面々、原胤昭、鈴木舎定、田村直臣、戸田欽堂について、広範な資料を用いて生き生きと甦らせている。
彼らが人間的欠点をもちながら一途に信じるところを生き、地の塩となった姿を、筆者は温かいまなざしと共感をもって描き出している。原胤昭らの不屈の努力はまさに感動的である。

●朝日新聞評(1989年8月27日)=カローザス夫妻の日本における活動とともに、いわゆる「築地バンド」のグループの中から原胤昭、鈴木舎定、田村直臣、戸田欽堂の業績が紹介されている。特に、キリスト教教誨師として、監獄の改善と囚人の更生事業に身を捧げた原胤昭と、自由民権運動の啓蒙家鈴木舎定についての記述には、新しい知見が随所に示され、感銘が深かった。
この本に描かれた、明治の青年たちの思想と行動の充実、見事さはどうだろう。ひとりひとりが、明確な主題をもって生き切っているように思える。それがもっとも強い感銘となって残った。

●愛媛新聞「著者と語る」(1989年7月31日)=カローザスから洗礼を受けた原胤昭、鈴木舎定、田村直臣、戸田欽堂の4人が本書の主人公である。
幕府の与力からクリスチャンになり、やがて北海道に渡って囚人の人権問題に取り組む原。幼児教育や育英事業の先駆者であり、封建制のしっこくに苦しむ日本女性の姿を「日本の花嫁」という本で米国に紹介した田村。戸田は「情海波瀾」を書いて日本の政治小説の開拓者となり、鈴木は故郷の盛岡に帰って自由民権運動に投じた。
時は明治ひとけたの時代。南北戦争後の米国からデモクラシーとフロンティア・スピリットに燃えて日本にやって来た宣教師と、明治維新という“革命”に沸き立っていた日本の青年たちが、百年も前のウォーターフロントに繰り広げた物語と言えるかもしれない。

●東京新聞評(1989年11月5日)=明治の開化期に、築地に居留地ができた。ここに住んだ長老派宣教師カローザスは、伝道し、学校をつくり、慶応義塾で教え、出版に熱心だった。カローザスのもとに英学を学びに来た学生たちは、同時にキリスト教と自由民権に向かった。クリスチャンの間で知られる、いわゆる“築地バンド”の人びとを描く。

●日本海新聞評(1989年7月31日)=江戸が東京に変わって間もない明治2年、米国からやって来た一人の宣教師が、夫人とともに築地の外国人居留地に伝道の拠点を構えた。名前はカローザス。といっても札幌のクラークや横浜のヘボンほど有名ではないかもしれない。
しかし、彼はやがて築地大学校を開設。夫人は日本で最初といわれる女学校を始める。そしてその門下からは、当時いち早く人権や女性の問題に立ち上がった「勇気ある人びと」が輩出していった。本書はその「築地バンド」の人びとに焦点を当てている。

●神奈川新聞評(1989年8月2日)=時は明治のひとけたの時代。南北戦争後の米国からデモクラシーとフロンティア・スピリットに燃えて日本へやって来た宣教師と、明治維新という“革命”に沸き立っていた日本の青年たちが、百年も前のウォーターフロントに繰り広げた物語。

●週刊文春評(1989年8月10日)=ユニークな食のエッセイで知られる太田愛人さんが、これまで一般にはほとんど無名だった明治初期のキリスト教徒にスポットをあてたノンフィクション作品をまとめた。登場するのは、文明開化の築地に拠って個性的な布教活動を展開する宣教師カローザスと、彼の4人の弟子である。
太田さんによれば、明治の自由民権運動、大正デモクラシー、昭和のマルクス主義運動など、近代の日本で自由や人権を主張した運動のバックには、常にカローザスや彼の弟子たちに源を発するキリスト教の精神があったという。

●信徒の友評(1989年10月号)=これは読みだしたらやめられない本です。
時は明治十年代の、東京・築地という一角に焦点を当てた、その意味では地味な歴史読み物であるにもかかわらず、こんなに面白く興味津々と読ませてしまうのは、著者の太田愛人氏自身が例によって大いに愉しみつつ歩きまわり書いているからでしょう。
読むうちにいつか新しい発見に驚き、深い感動に導かれることとなります。史料としても読み物としても第一級。

●こころの友評(1989年9月1日)=築地を活動の拠点にしたのはカローザス夫妻であった。彼と、彼のもとに集まった日本人青年群像の、日本の歴史において果たした役割などを叙述したものが本書。
太田さんはその中でも「築地バンド」とその後大きな高なりをみせた自由民権運動との関連に注目する。

●赤旗評(1989年7月24日)=文明開化期の東京、築地の外国人居留地に宣教師カローザスがいました。伝道、教育、出版に熱心で影響も小さくなく、門下からは自由民権思想に共鳴した原胤昭、鈴木舎定、田村直臣、戸田欽堂が出ました。海外文化の窓口である築地と政治結社の拠点である銀座との間に生まれた「築地バンド」。進歩的人士が影響を与え合って反権力に生きた姿を紹介する四人の小評伝を中心に、政治的に激動し、外国人やクリスチャンにはきびしかった時代状況を描いています。
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