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絶滅した日本の巨獣

【書評再録】


●毎日新聞評(1990年2月16日)=大昔の日本列島には恐竜が絶滅した後も生き残り大型化した哺乳類--巨獣--がいた。陸や浜辺、海で活躍していた彼らの姿や暮らし、当時の日本列島の様子など、謎が次第に解明されていく過程がわかりやすい文章で語られる。臨場感のある写真と細密な復元図が豊富なことも楽しみを深め、巻末の骨格の展示館リストは親切である。
ユニークで読みやすく、多くの人にすすめたい一冊。

●アニマ評(1990年1月号)=巨獣の発見のようす、化石をいかにして復元するのか、その過程を子どもたちにもわかりやすく解説している。そして、化石を通してしか知ることのできない、巨獣が住んでいたころの日本をあざやかに再現する。恐竜ばかりではなく、巨獣もたいへん興味深いことを教えてくれる楽しい読み物だ。

●どうぶつと動物園評(1990年2月号)=日本にいたゾウを中心に、陸、浜辺、海にいた巨獣たちを、化石の発見のエピソードやその姿の復元、そして絶滅の原因を紹介した本です。漢字に仮名がふってあるので、小学校高学年から読めますが、内容は大人にも十分参考になるでしょう。

●日本の生物評(1990年1月号)=恐竜は古生物学書でよく紹介されているが、今までほ乳動物を扱ったものはほとんどない。ナウマンゾウ、デスモスチルス、パレオパラドキシアといった巨獣こそ、日本から化石が出、日本で知られる古生物なのである。本書では、当時中学生だった紀川晴彦さんの明石市でのアカシゾウ、信州大学の地質学教室野外実習でのシンシュウゾウ、水杉和哉さんの岡山県津山市でのパレオパラドキシアの発掘の話が盛り込まれ、化石発掘の興奮がひしひしと伝わってくる。発掘の方法や、化石から生態復元するまでの推理考察の過程も図や写真で紹介されている。小学生から大人まで楽しめる巨獣の古生物学の入門書といえる。

●子どものしあわせ評(1990年7月号)=爬虫類である恐竜が滅んだ後、地上にふえていった獣たちのうち、日本列島に生きていた巨獣のくらしぶりを、発掘された化石を追って再現する。東京の地下鉄工事現場で見つかったナウマンゾウの化石、海辺でくらしていたと思われるデスモスチルスの骨格復元の推移など、巨獣化石の発掘現場の実話を語りながら、化石から過去の巨獣がよみがえる古生物学の面白さを展開。巧みな文も子どもをひきつける。

●週刊朝日評(1990年1月19日号)=日本では、恐竜は見つからないらしいが、さまざまな巨獣がいた。「絶滅した日本の巨獣」はそれを詳しく教えてくれる。これはホーナーの本とは対照的に、教科書的であり、子ども向けに易しくかつ優しく書かれている。ナウマンゾウはよく知られているが、デスモスチルスというカバがワニのように這いつくばった体長2.7メートル、1.2トンの怪獣が千数百万年前の日本にいたのは初めて知った。
ここにも推理がある。デスモスチルスの化石がすべてあおむけの姿で発見されていることから、四本脚をワニのように横にはり出していたと推定している。またそれは、遠浅の海で腹を水につけて過ごすのに最適の姿であると、生態にまで推論は展開する。この二冊の本を子どもとともに読めば、子どもに勉強させる方針が変わるかもしれない。繰り返すが、日本の子どもにも好きなことに熱中して一生の仕事にする人生を送らせたいものだ。

●女性のひろば評(1990年4月号)=恐竜が滅びた後に生き残った、哺乳類の中でもとくに体が大きいナウマンゾウやオオツノシカ、クジラなどの動物のお話です。そんな動物の姿を、学者たちの研究によって復元していく過程がじゅんじゅんと解き明かされていきます。
巨獣の化石が発見された地名一覧を見ると、私たちの足下のどこにも大昔に生活していた巨獣たちがたくさんいたことがわかります。発掘の糸口が子どもの化石掘りであった場合も紹介され、この本を読んだ子どもたちにもそんな仕事をしてほしいという著者の願いがこめられた、やさしく、しかも格調高い読み物。小学校高学年から大人まで。

●子どもの本棚評(1990年7月号)=題名やつくりからはおとなの本のようにも見えるが、内容は子どもにもよくわかるように、十分考えられた構成の科学読み物である。
私は優れた科学読み物の必要十分条件として「読者に予備知識を要求しない」「内容・記述に整合性があり読み進むうちに高度の知識に達することができる」の二点を考えているが、本書はこの条件を十分に充たしている好著である。

●地団研そくほう評(1990年1月号)=この本は、その題名が示すように絶滅した日本の巨獣について子ども向けに書かれた本である。
ひとつひとつの話が、発見のいきさつから始まって、骨格や生態の復元までの過程をとおして書かれており、大型脊椎動物化石の研究方法や苦労それにおもしろさがどのようなものかよくわかる構成になっている。
子ども向けに書かれた本とはいえ、その内容は、最新の研究成果とオリジナルな図や写真が豊富に使われていて、脊椎動物化石の研究者が読んでも十分勉強になる。また、このような最新の成果を、いかにわかりやすく書くかといった、普及書の書き方の手本としても、本書はたいへん参考になる。一読をおすすめします。

●赤旗評(1989年12月27日)=むずかしい動物の学名の由来や進化の過程を、子どもにもわかる語り口で説き明かします。
「巨獣」を通じて日本列島の歴史と考古学への旅に誘ってくれる1冊です。
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