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親をたのしむ5つのスキル

【内容紹介】●本書「訳者まえがき」より


 「問題児」といわれる子どものひとつの問題点は、自尊心が低いことです。「自尊心」とは、短所や弱点も含めて自分を好きでいられること、自分を認め尊敬し、大切に思う心のことをいいます。自分を好きでいられる子どもは、他人の欠点や違いを認めることができます。自分を大切に思える子どもは、いじめたり、暴力で人に向かわなくてすみます。専門家からも指摘されていますが、この自尊心を育てるのは、親の大事な役割です。
 自尊心を育てる要素として「身体的な安全」と「情緒的な安定」があげられていますが、安全な感覚はまず家庭で育まれるものです。身体的な安全は、自尊心を育てるための要素のいちばんの要で、子どもの健全な自意識を発達させるための必要条件です。それなしには健康的な自尊心の発達は望めません。子どもを威嚇したり脅威を与えない家庭環境、親と一緒にいて安全だと感じられることが、子どもにとっては不可欠なのです。
 子どもにとっていちばん身近な親の影響は多大で、子どもは親しだいといっても過言ではありません。親が変われば子どもは変わります。つまり、親が変わらないかぎり子どもは変われないということです。子どもの声なき叫びを、子どもの代わりになって親にメッセージを送りたいと思っていたことが、本書を翻訳する動機にもなっています。
 著者エリザベスは小学校の教諭としての経歴があり、彼女自身も2児の母親だということもあって、子どもの性質を非常に個別的にとらえています。決して、子ども一般はという言い方をせず、一人ひとり別個の人格があり、特徴がある。だからその子の個性を生かした子育て法を考えてみましょう、と語ります。
 また、私にとっての課題であった、活発な性質をもつ子どもについても、「子どもの性質の特徴が活発すぎたり、激しすぎたり、頑固すぎると、親は悩まされます。もしあなたの子どもがそういう性質をもっていたら、おとなしい子どもをもつ親よりも、はるかにたいへんな生活になるでしょう。しかし、子どもの時にはやっかいだと思う特徴も、成長すればすばらしいものになるのです。問題なのは、その子どもの特徴とつきあっていく方法を学ぶことです」と語っていることに、どんなに励まされたことか。
 子どもはすべて独自の個性を持って生まれてきます。一人ひとり違って当然です。一元的なしつけ法だからこそ、子どもは自主性を伸ばせないでいるのです。
 エリザベスは、親の役割とは「愛と制限」を示すことだと言います。その子の性質もふくめてあるがままを受け入れること、何かをしたら愛してあげる、というような条件付きでない愛情をあたえることが大切だと語ります。そして、もう一つの親の役割は、感情や行動や態度に適切な制限をあたえることで、社会のルールを伝えていくこと。自分の行動が「適切」か「適切でない」かを、親からの問いかけで判断できるようにすることだと説いています。
 子育ての時期はいずれ終わっても、親と子の関係は永遠です。創造的で新しい親のあり方を学んで、子どもにとっても、あなたにとっても有効な親業を身につけたいものです。本書が母親にとっても父親にとっても、子どもの親であるうえで大きな力になれれば、翻訳者としてたいへん嬉しいかぎりです。
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