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プロも知らない
「新築」のコワサ教えます

【内容紹介】●本書「まえがき---住宅展示場に行くまえに……」より


 97年5月、全国を慄然とさせた神戸小学生惨殺事件。逮捕された14歳の少年A君の犯行の背景に、住宅汚染があるのでは……といったら、あなたはおどろかれるだろう。
 神戸須磨地区に転居してきて10年。少年は4歳の時から新築住宅に10年間も住んでいたことになる。
 次の症状をみてほしい。
 「人生が暗く感じられる」「極度にウツになったり、攻撃的になったりする」「なんでもないことに過剰に反応し、ヒステリー的な反応を起こす」「独りで閉じこもっていたくなる」、さらに「死の世界や、宗教の世界が慕わしくなってくる」「発想が病的になる」……。まるで少年A君の心象風景そのものではないだろうか。
 これはじつは有機リン系農薬による農民の中毒症状である。
 この有機リン系農薬には、このように精神を狂わせる神経毒性がある。さらに発ガン性なども。
 その恐るべき農薬が畳のダニ殺虫剤として、合板の防虫剤として、さらに壁紙の難燃材、床下のシロアリ駆除剤などに大量に使われていたのだ!
 畳には、有機リン系農薬が水田使用基準の20〜30倍も使われている。夏場には室内濃度が空中散布の安全基準の3.5倍に達した例も。なぜか? 「田んぼではないので、いくら使ってもかまわない」のだ。さらに、ほとんどの新建材からやはり神経毒性、発ガン性のある有毒ホルムアルデヒド。壁紙からフタル酸化合物。塗料からは、これも神経を犯す有機溶剤群……。そして、3DK、4DKといったカギのかかる個室の密室化が、少年の孤独に拍車をかけた。
 なるほど、他の要素もいろいろあげられるだろう。しかし、想像を絶する室内汚染が、少年を狂気の世界に駆り立てたこともまちがいない。A少年の例を含め、97年度前半だけで、少年の凶悪犯罪は前年比で6割も激増している。それも、発作的な「いきなりの凶行」がほとんど。子どもたちを冒した“室内汚染”の爆弾が、爆発を始めたような気がしてならない。
 イライラする。夫婦でどなり合う。子どもの顔つきまでが変わってしまった……などなど。家庭内暴力、離婚、自殺まで、住宅内の有毒な汚染物質が原因だったとしたら、これほど悲しくも、悔しいことはない。しかし、家庭内の不和はじつは、居間の壁に使われている合板から出る有毒ホルムアルデヒドの気体が、ひきがねかもしれないのだ。ある専門医は、「住まいから防虫剤を取り除いただけで、ほとんどアレルギーが治ってしまうケースもある」という。アトピーやぜんそくなどで、あれほど悩んでいたのはなんだったのか、といいたくなる。
 私たちは、戦後数十年、なにも知らされていなかった……。
 最近、ようやく“シックハウス症候群”という病気が、話題を呼ぶようになってきた。新しく家を持ちたいと思っているあなた。住宅展示場に行く前に、不動産屋を訪ねる前に、この一冊のページをめくってほしい。
 そしてじっさい家を設計し、建設する建築家のかたがた、工務店の方、現場の大工の皆さん、さらに建築会社、不動産会社の責任者のかたに、この一冊を手に取ってほしいのです。「まさか……」「知らなかった!」、そのような痛恨の思いを21世紀に向けての健康な住宅づくりに活かしてほしいのです。
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