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私の犬

【内容紹介】本書「あとがきに代えて」より


 昭和4年、父はまだまったくの田園地帯であった現在の目黒区自由が丘に土地を求め、たくさんの犬たちをはじめ狼、ジャッカル、狐、狸、ハイエナ、麝香猫、月の輪熊、山猫などを放し飼い同然にして念願の生態観察に入りました。
 動物の観察はできる限り自然に近い状態で、それも個々の動物ではなく家族、あるいは集団、それも世代を通してみなければ本当のことはわからない、というのが父の考えでした。
 そして、それらの動物の正しい観察をふまえた文学が日本にも生まれることを願って、昭和9年6月「動物文學」が創刊されました。動物文学という言葉は序にありますように、いまでこそ、当たり前の言葉として使われていますが、父がこの言葉を使いだしたころは、ずいぶん不思議がられたものでした。
 この「私の犬」には父がそうした創作活動に入った比較的初期のものが集められています、しかし、書かれた年代は古くても「チムの死とその前後」をはじめ父の動物文学の中の代表的なものが多く含まれているので、動物文学のひとつの古典として読んでいただければ幸いです。
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