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日本の森林植生

【内容紹介】本書「まえがき」より


 日本の森林は、いろいろの立場から見直されつつある。大きな理由の一つとして、環境問題が身近なものとなり、森林の重要性があらためて認識されてきたことがあげられる。日本の森林の現状と将来は、今では一部の者だけの関心事ではなくなってきているとともに、森林についてのさらに深い理解が要求されるようになった。そのような情勢のなかで、日本の森林をひととおり解説し、専門家というよりも、少しでも森林にかかわりをもつ人や、ふれあいを求める人たちの参考になるようにと思って書いたのが、本書である。
 この本では、森林の機能、保護、利用などについては、それほどくわしくふれていない。しかし、それらの前提または基礎として、日本の森林について知っておいたらよいと思われることは、すべてというにはほど遠く、また多少上すべりながらも、かなり多く述べたつもりである。私も、日本の森林を研究してきた者の一人ではあるが、その対象は限られた一部にすぎない。したがって、本書は、多くの先人の努力のあとをたどるとともに、現に研究を進めている方がたの貴重な成果をもとにして、まとめることができたものである。不必要と思われるほど古いことをもちだしたり、研究の現状にあまり批判を加えなかったのも、そのためである。
 本書によって、多様で特徴のある日本の森林の姿と、それが今どのような状態にあり、それを研究者はどうとらえているかということなどが、いくらかでもわかっていただけたら幸いである。また、これから日本の森林の研究を志す方たちにとって、なんらかの指針にでもなれば、非常にありがたいことである。
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