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樹木学

【内容紹介】●本書「はじめに」より


 樹木の本をなぜ書くのか。樹木については、すでにたくさんのことが知られている。しかしそれは世界各国の多種多様な雑誌や書物に記されたもので、あちこちに分散している。樹木の講義を行いながら、いつもこのことにフラストレーションを感じていた。これが本書を出すに至った動機である。長命で図体の大きい樹木は過酷な世界に対処すべく、実にうまくデザインされている。伝えるべき魅惑的な話は山ほどある。誰かがこの種の本を書いておくべきであった!
 私のねらいは、分散した情報をより合わせて、樹木についての一般的な疑問に答え、数々の誤った神話を正すとともに、樹木が活動を開始して、成長し、子孫を残し、死んでいく、その驚くべき世界を開示することである。私がこれに成功したかどうかは皆さんの判断に待つしかない。
樹木学

【内容紹介】●本書「訳者あとがき」より


 一つの場所に根を下ろした樹木は一生そこにとどまって厳しい日照りや冬の寒さ、暴風雨に耐えていかなければならない。害虫に襲われることもあるし、悪質な病原菌やウイルスにおかされることもある。そのうえ、水、養分、太陽光をめぐって植物同士の熾烈な争いがある。それぞれの樹木は、それぞれの地域の過酷な環境を生き抜き、子孫を残していくために、独自の進化を遂げてきた。この進化の過程で樹木の多様な形が生まれ、ユニークな生存戦略と繁殖戦略が編み出されたとみるべきであろう。
 本書は何よりもそのことを教えてくれる。この本を一読して身近な木々をもう一度眺めてみると、けなげに生きている樹木の一本一本が急にいとおしく思えてくる。それは単に枝葉のついた「材木」ではない。あるいはまた抽象的な「みどり」でもない。われわれと同様、この世に生を享けて、懸命に生き、子孫を残し、死んでいく生命体なのだ。そのことを改めて認識させられるのである。
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