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事例・判例でみるセクハラ対策

【内容紹介】●本書「まえがき」より


 セクシュアル・ハラスメントという舌を噛みそうな言葉が日本に入ってきて、おおよそ10年になる。こんな口にしにくい言葉であったにもかかわらず、日本の社会にすっかり馴染んでしまい、しっかりと根を下ろしてしまった。時代的に求められていた表現、言葉であったからであろうが、流行語にもなり、もはや知らない人がいないくらいの言葉になっている。
 しかし、言葉自体が広く知られることと、その本当の意味が伝わることとは、これまた別だということの典型的な言葉であったようにも思える。それは10年たつ今でも、「セクシュアル・ハラスメントとは何か?」というテーマが繰り返されており、「どうも、よく分からない」という嘆きが聞こえてくるからである。
 法律での規制がはじまり、言葉として知らない人はいない時代になっても、依然として「どこから、どこまでがセクハラになるのか」「女が勝手に判断するのでは、理解しようがない」「セクハラとジョークはどこが違うのか」などという質問も絶えない。どうも、こうした嘆きを聞いていると、日本人には、もともと理解しにくい言葉であり、その上、マスコミ用語として使われすぎたために、間違って理解されてきたという面があることは否定できないようだ。
 また、一方で、アメリカからの輸入用語ということもあって、定義を含めて直訳的なものが多すぎた。たとえば、「性的嫌がらせ」という訳からして、多方面から疑問がだされていることだし、「代償型」「環境型」という分類も日本の実情に照らしてみるとふさわしいかどうかは疑問である。こんな、直訳的な持ち込みも混乱の元になっていることが分かる。
 こうした混乱から抜け出すためには、一刻も早く、日本的な実情に合わせた理解を深めることが必要である。もはや、アメリカなどの事例だけに頼ることなく、日本の現実によって解釈し、理解することによって、その対策も現実的なものとしなければならない時期に来ている。
 そこで、日本で実際に起こっている事件は、一体どのようなものなのか、そして、裁判として争われているのはどんなケースで、どのような判断が下されているのだろうか。こんな現実を理解し、対策をたてることを目的として、この本を作成した。ぜひ、職場のセクハラの理解と対策に役立ててほしい。
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