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フィールドガイド日本の火山シリーズ一覧
フィールドガイド日本の火山3
北海道の火山

【内容紹介】●本書「はじめに」より


 南北に長く連なった日本列島の北端部に位置する北海道は、東北地方全体を合わせたものよりもさらに大きな面積をもつ、本州についで2番目の広さをもつ大型の島です。北海道もまた火山に彩られた島であり、とくにその透明度を誇るおおくの神秘のカルデラ湖の存在で有名です。また、北海道には活動的な火山がおおく、とりわけ渡島半島の噴火湾周辺には、江戸時代(17世紀)以降に爆発的なプリニー式噴火をくりかえしてきた、樽前、有珠、北海道駒ヶ岳などの活火山がひしめいており、日本列島でも有数の「噴火銀座」となっています。
 本書では、これらの火山のうち、雌阿寒、十勝、恵庭、樽前、有珠、北海道駒ヶ岳の各火山を紹介します。これらはいずれも2000年前以降に噴火活動を経験している活火山です。
 マリモで有名な阿寒湖にほど近い雌阿寒火山は、その主要な部分がここ1万年間に形成された若い安山岩質成層火山で、1955年以来活発な噴火活動を断続的にくりかえしています。最新の噴火としては、1996年の水蒸気爆発があります。
 北海道の中央部に位置する十勝火山もきわめて活動的な安山岩質成層火山で、1926年5月の噴火の際には、岩屑なだれと融雪によって大規模な土石流が発生し、山麓の富良野盆地に甚大な災害をもたらし、また昭和以降も、1962年と1988〜1989年にマグマを噴出する噴火活動をおこなっています。
 支笏湖のほとりにそびえる静かなたたずまいの恵庭火山は、主として溶岩流からなる安山岩質成層火山ですが、最近2000年間に噴火を経験している生きている火山です。
 支笏湖をはさんで対岸に位置する樽前火山は、江戸時代以降、火砕流噴出をふくむ爆発的噴火をくりかえしてきた危険な火山で、火砕物からなる緩やかな山体と山頂の溶岩ドームからなる安山岩質成層火山です。樽前火山の最近の大規模噴火としては、1874年と1909年のものがあり、現在の山頂溶岩ドームは、この最後の大噴火によって生じたものです。
 デイサイト〜流紋岩質溶岩ドーム群で特徴づけられる有珠火山も、長い休止期のあと、江戸時代になってから爆発的噴火を再開したきわめて活動的な火山で、1943〜1945年には東山麓の畑の中から昭和新山溶岩ドームが噴出し、1977〜1978年には大規模なプリニー式噴火をおこなって、山麓の洞爺温泉街などに大きな被害をもたらしたことは記憶に新しいところです。
 安山岩質成層火山の北海道駒ヶ岳も、有珠や樽前に勝るとも劣らない要注意の火山で、江戸時代はじめには大規模な山体崩壊がおこって岩屑なだれが生じ山麓の大沼などが形成されましたが、その後もプリニー式の爆発的噴火をくりかえしている暴れん坊です。最近では、1929年と1942年に大規模な噴火をおこない、降下軽石や火砕流によって山麓の町村に大きな被害をもたらしました。

本書の構成
 本書では、まず北海道の火山についての概説をおこない、その後「火山地形と火山の構造」について簡単に解説し、さらに日本列島の火山から噴出する「マグマの成因」について最近の考え方を紹介します。そのうえで、雌阿寒、十勝、恵庭、樽前、有珠、北海道駒ヶ岳の各火山について取り上げています。さらに、巻末には簡単な用語解説が載せてあります。
 各火山の項では、地形図や交通に関する情報をしめした後に、観察するさいの注意事項や観察に適した時期が述べられています。それから、火山地形や噴火史の概説、それに温泉の紹介があり、その後に各観察地点の解説がしめされています。また、姉妹編である「関東・甲信越の火山1」には、露頭観察の際の手引きなどが掲載されていますので、ぜひあわせてご覧ください。
 本書には、日本火山学会火山地質ワーキンググループのメンバーをはじめ、フィールドの第一線で活躍するさまざまな研究者・技術者の方のこれまでの研究成果がもりこまれています。一般の方にも理解できるようにやさしく書かれてはありますが、内容の学術的レベルは決して落としてありません。
 本書を手にして、火山のフィールドに出かけてみましょう。厳しくも美しい自然と出会い、温泉を満喫し、火山と直接対話することによって、その本当の姿にふれることができるはずです。

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