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地質スケッチ集

【内容紹介】本書「はじめに」より


 地質調査の現場には、スケッチブックを携帯する。私の現場とは、ダム、道路、トンネルなど土木工事の現場が多い。
 学生の頃、卒業論文には写真が必要であったが、写真機やフィルムなど費用が払えないので、現地の観察事項はすべてスケッチして論文に張り付けた。先輩の論文を見ると美しいスケッチが載っていた。写真の代わりにスケッチすることは先輩たちも行っていたのである。
 イギリスの地質調査の教科書を見るとスケッチの大切さが書かれている。いわく「地質のスケッチは、絵画としての優秀さを競う必要はない。観察した結果を正確に描けばよい。スケッチは、写真の撮れない暗いところや、木の陰でも、木を避けて書くことができる」とある。この言葉に励まされて、現場では写真以外に多くのスケッチをするようになった。
 土木現場では、たくさんの人が働いており、危険な重機も動いているので、のんびりとスケッチするわけにはいかないのが常である。人を待たせて5分あるいは10分以内にスケッチしなければならない。じっと対象を見て、急いで輪郭を書き、着色は後ですることになる。このようにしてスケッチしたスケッチブックがだいぶたまり50冊以上になったので、内容を整理してみたのがこのスケッチ集である。
 現場といっても、私はダムの地質調査やダム工事に関する仕事が多いので、ダムに関係のあるスケッチが多い。スケッチブックを見てみると、まさに日記のようなもので、いつ、どこに行って何をしたか、それぞれに思い出がある。
 もちろん人様に見せられるようなスケッチは限られるので、関係者に話せるようなものを選んでみた。初めに述べたように、絵画としての優秀さは念頭にない。
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