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日曜の地学17 愛媛の自然をたずねて

【内容紹介】●本書「まえがき」より


 本年、1988年は四国にとって記念すべき年となりました。四国四県島民の長年の夢であった瀬戸大橋が4月10日に開通し本州と陸つづきとなったからです。この架橋のもたらす人的物的な交流は、四国に住む私たちにははかりしれないインパクトを与えてくれることでしょう。
 わが愛媛県は約1500kmにおよぶ長大な海岸線と多くの島々、西日本一を誇る標高1982mの石鎚山をもっております。そして北部を瀬戸内海国立公園、南西部を足摺宇和海国立公園に囲まれ、石鎚国定公園および滑床、金砂湖、肱川、奥道後、玉川、四国カルスト、篠山、佐田岬半島・宇和海、皿ヶ嶺連峰と宇和海海中公園の9地区の県立自然公園をもち、風光明媚な自然が保護され、自然に親しむ機会にめぐまれているといっても過言ではないでしょう。
 これらの自然の基盤となる地質は、中央構造線をはさんで、内帯の領家帯から外帯の四万十帯までを占め、先カンブリア時代と推定される古い岩石から、シルル紀と石炭紀以降現在にいたるまでの各時代の地層がそろっており、これらが特徴ある自然をつくりだしています。
 愛媛の地質案内・鉱物採集・自然観察については、すでに数点の書籍が刊行されています。しかしながら、愛媛の自然研究の進歩は著しく、また対象となる自然観察の好適地も、道路建設、宅地造成、農林地開発などの土木工事が進捗し、刻一刻と変貌しております。さらには、岩石、鉱物、化石などの採集も無制限に可能なものでもなく、放置すれば自然破壊につながりかねません。
 本書は、愛媛県内各地で自然をたずねようとする人びとの手引きとなることを願って、地域別・項目別に編集いたしました。小学校・中学校の先生方、高等学校および大学の生徒・学生のみなさんの自然観察用のテキストに、一般家庭にあっては郷土の自然を理解いただく一助として、他県から訪れた方々には愛媛の自然を楽しんでいただく資料として、ひとつでもお役に立つことがあるとすれば幸いです。
【内容紹介】●本書「改訂版にあたって」より

 「愛媛の自然をたずねて」初版を上梓させていただいてから、早くも9年の歳月が過ぎ去ろうとしています。当時は、四国と本州とが瀬戸大橋でつながった記念の時でしたが、現在は西瀬戸自動車道・本州四国連絡道路の完成を間近に、四国は三橋時代に入ろうとしています。これに加えて愛媛県内でも四国縦貫自動車道の整備が進み、本年2月には伊予市まで開通の予定で、さらに大洲市までの工事が進められています。
 この期間のその他の交通網の整備とともに、県下各地で愛媛の自然を解説・紹介する博物館などの施設の建設も進められ、それらの中には愛媛県総合科学博物館をはじめとして、石文化伝承館・面河山岳博物館・肱川町風の博物館・城川町地質館・大野作太郎地質館などがあります。
 他方、1995年1月17日の阪神淡路大震災の教訓を基に、全国各地で地震予知・地震動規模の推定のために、活断層の調査が進められているところですが、本県においても中央構造線活断層系の伊予断層を手始めとする活断層調査が始まっており、その成果が期待されています。
 今回の改訂版作成にあたっては、「愛媛の活断層」および「愛媛の植生図」を追加するとともに、各章の末尾にありましたページの空白部分を利用して、それぞれの章に関連する観察地点などの追加を試みました。
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