| 星野修+齋藤暢宏[著] 長澤和也[編著] 1,600円+税 四六判上製 112頁(オールカラー) 2016年7月刊行 ISBN978-4-8067-1517-7 魚の頭部に寄生するカイアシ類、口の中で暮らすウオノエ類、吸血するムツボシウミクワガタ、保育をするオニナナフシ類、 著者が世界で初めてとらえた、謎に満ちたモンスターたちを大公開! 数千種もの生物が生息する東京湾のすぐ先にある伊豆大島の、身近な海にいながら、知られざる存在である小さな生物、 寄生生物や共生生物たちは、その不思議な生活ぶりで、生態系の中で海を支える存在となっている。 年間500本の潜水観察と卓越した撮影技術によって、寄生・共生生物と特徴的な生態をもつ生物たちの、知られざる姿と驚きの生活ぶりを伝える。 |
星野修(ほしの・おさむ)
1966年6月30日新潟県生まれ。
都内にてデザイナーとして7年間勤務後、1993年に伊豆大島へ移住。
水中ガイド業務に従事し、2004年に独立。
現在、チャップ(ネイチャーガイド)代表。毎日フィールドに通い、年間500本以上の潜水観察と撮影に専念。
著書『フィッシュウオッチングガイド〈part 1〉東日本』(共著、マリン企画、2007年)
齋藤暢宏(さいとう・のぶひろ)
1967年10月11日群馬県生まれ。
東海大学大学院海洋学研究科海洋資源学専攻修了、水産学修士。
現在、(株)水土舎主任研究員。河川環境調査業務、生物分析業務(プランクトン分析、魚介類胃内容物分析など)等に従事するかたわら、
個人的な興味から甲殻類(寄生種を含む)の研究を実施。
著書『エビ・カニ・ザリガニ―淡水甲殻類の保全と生物学』(共著、生物研究社、2011年)
長澤和也(ながさわ・かずや)
1952年4月25日山梨県生まれ。
東京大学大学院農学系研究科博士課程修了、農学博士。
北海道立水産試験場、キール大学海洋研究所、農林水産省遠洋水産研究所、水産総合研究センター養殖研究所、東南アジア漁業開発センター養殖部局、
水産総合研究センター東北区水産研究所を経て、現在、広島大学大学院生物圏科学研究科教授。専門は水族寄生虫学。
著書『魚介類に寄生する生物』(成山堂書店、2001年)、『さかなの寄生虫を調べる』(成山堂書店、2003年)、
『フィールドの寄生虫学―水族寄生虫学の最前線』(編著、東海大学出版会、2004年)、
『カイアシ類学入門―水中の小さな巨人たちの世界』(編著、東海大学出版会、2005年)ほか。
はじめに
魚類に寄生するカイアシ類
寄生性カイアシ類の卵嚢と孵化
寄生性カイアシ類の重度寄生
様々な宿主を利用するカイアシ類
似るが異なる寄生性カイアシ類
多様な寄生性カイアシ類
ハナダイ類に寄生するカイアシ類
フグ類に寄生するカイアシ類
魚類の眼球に寄生するカイアシ類
魚類の鰓蓋内面に寄生するカイアシ類
魚類の体表を這い回るカイアシ類
数百個体も寄生するカイアシ類と遊泳個体
ウミウシ類に寄生するカイアシ類
無脊椎動物に宿るカイアシ類
浮遊するカイアシ類
海の宝石、サフィリナ類
底生性カイアシ類
■コラム@共生か寄生か
寄生虫を食べてくれるクリーナーたち
魚類の口腔に寄生するウオノエ類
コケギンポ類に寄生するウオノエ類の幼体
魚類の体表に寄生するウオノエ類
ベニハゼ類に寄生するウオノエ類の幼体
宿主を求め遊泳するウオノエ類の幼体
へビギンポ類に寄生するムツボシウミクワガタ
エビヤドリムシ類の幼体
アカホシカクレノコシヤドリ
アミヤドリムシ類と雌雄の生活様式
様々なアミヤドリムシ類
ニジギンポに寄生するヒル類
様々な魚類に寄生するヒル類
■コラムA寄生生物の撮影テクニック
アカヒトデに寄生する貝類
ウニ類に寄生する貝類
トゲトサカ類に宿る貝類
ケヤリムシの棲管上にすむ貝類
■コラムBアマチュア研究者に分類学のススメ
■コラムCムツボシウミクワガタの生活史
カイメン類に宿るゴカイ類
無性生殖するゴカイ類
ホヤ類に宿るゴカイ類
海のドラゴン、カサネシリス
ゴカイ類の生殖行動
ウミケムシ類とウロコムシ類
ウロコムシ類
卵を持ち歩き守る雄、ウミグモ類
海のナナフシ、オニナナフシ類
オニナナフシ類の保育
海のワラジムシ類
ハマダンゴムシ
ヒメオオメアミの体色変異
ホソツツムシ類の棲み家
ヤドカリモドキ類
海の掃除屋、コノハエビ類
海のオケラ、タナイス類
砂地が隠れ蓑、クーマ類
小さなエイリアン、ウミノミ類
産卵・保育するワレカラ類
集団生活するホソヨコエビ類
カイメンがゆりかご、トウヨウホヤノカンノン
様々な環境に棲むヨコエビ類
色鮮やかなドロノミ類
擬態するテングヨコエビ類
カイメンに棲むアミ類
水中を漂う、ジェリーフィッシュライダー
海に漂う小さな星たち
下等な動物群、扁形動物
浮遊する貝類
ハウスを広げるオタマボヤ類
イソヤムシ類の繁殖行動
イソヤムシ類の体色変異
コケムシ類
若返りの神秘、ベニクラゲ類
海に咲く花、ヒドロ虫類
海を飾る花虫類
果てしなく広がる研究のフロンティア──小型甲殻類の魅力
主な参考文献
索引
あとがき
東京都伊豆大島の海が、私の観察フィールドである。溶岩により形成された海底には付着生物が多く、数千種と予測される海洋生物を観察できる。
多彩で綺麗な生物たちや回遊魚などはもちろんだが、生態系を考えれば、実は小さな生物たちが海を支えていることに気づく。
一般には余り認識されない、そうした小さな生物たちは、多様かつ興味深い手段を使って生活し、繁殖を行う。
寄生生物や共生生物も、そのひとつである。全身を宿主内に収める種から、宿主の表面に付着する種まで、きわめて多様である。
一方、自由生活性の小型生物たちも、興味深い生態を有している。他生物の死骸を掃除したり、みずから住み場所を作ったり、保育を行ったり、
多くの生物が独特の方法を用いて生活している。
生物の種類が多くて、とても全部を紹介しきれないが、伊豆大島で見られた寄生生物や共生生物、また特徴的な生態を持った生物たちを、
本書では紹介している。掲載した写真のほとんどすべては、私自身が海中で撮影したものである。また、本文の解説の多くは、自身の観察に基づいている。
ページごとに小見出しを設け、登場する生物の標準和名と学名、大体の大きさ、寄生・共生種の場合は宿主名を記した。
普段、気づくことのない小さな生物たちの存在を知ってもらうことで、生物の多様性を伝えることができれば幸いである。
2016年7月
著者を代表して
星野修
「何と美しい世界だろう。この美しい世界を多くの人に知ってもらいたい」
本書の主著者の星野さんから出版に関する相談を受け、掲載予定の写真を初めて見たときの、私の感想である。
私は、ここ数年、星野さんが伊豆大島の生物から採集した寄生虫を研究する機会に恵まれ、分類学的研究を行ってきた。
本書で最初に紹介したカイアシ類のホシノノカンザシやナガワキザシは、それら寄生虫の一部である。
第二著者の齋藤さんも、私と同じ立場であり、星野さんが採集した寄生虫、特にワラジムシ類に関する研究を進めてきた。
エビヤドリムシ類のアカホシカクレノコシヤドリは、正に星野さんが採集し、昨年、齋藤さんが新属・新種として記載した種である。
今回、このような関係にある私たち三人が共同して出版したのが本書である。
本書のメインは言うまでもなく、伊豆大島で撮影された多くの海洋生物の写真と解説である。この部分は、星野さんが担当した。
水中写真の美しさは群を抜いている。写真の解説は、まず星野さんが撮影時の状況について執筆し、これを著者らが繰り返して読んで検討し、
海洋生物の分類や生態に関する記述を整えた。また、次頁に示した海洋生物の専門家に、それぞれの分野に関する原稿を読んでいただいた。
そして、専門家からのコメントに基づいて、齋藤さんと私がさらに必要な修正を行った。こうして本書の原稿を完成させたが、
編集期間がきわめて短かったため、記述にはまだ曖昧な点や誤りが含まれていないかとの不安がある。
もしそれらがあれば、そのすべては編集者である私の責任である。お気づきの点があれば、遠慮なくご指摘いただければ幸いである。
2016年7月
長澤和也