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筑豊のこどもたち

【書評再録】


●朝日新聞記事(2001年4月5日)=「筑豊のこどもたち」が出版されたのは60年1月。写真家土門拳が閉山に沈む炭鉱まちを回り、半月で撮りきった。
表紙を飾るのが、真っ暗な家のなかを背にほおの輪郭がくっきりと浮き上がる小学4年生の姉だ。3つ違いの妹とともに写真集の軸になった。
土門の「絶対非演出」に、2人はこたえた。
ぼろをつくろい、木っ端で火をおこす姉は美しい顔立ちだ。電灯がわりのろうそくにマッチで火をつける姉と、見守る妹。姉妹の物憂いたたずまいと無邪気さが漂ってくる。

●山陽新聞評=圧倒されて、しばしことばを失った。ここには自分たちを切り捨て、犠牲にしようとする者の前に、幼いまま、素手で立たされ、さらされて、じっとそれを見つめ、向かい合う子供たちの姿があるからである。

●朝日カメラ評=社会的アピールをあらわにしたおそらく戦後最初の写真集であり、土門拳が1950年ごろから唱えた社会的リアリズムの実践が、前年の「ヒロシマ」に続いて、ようやく実りをもたらした画期的なものだった。…(中略)…貧しさの中で、聖女のように写し出された少女たちの像は、中でも、圧巻のシークエンスであり、そういう視点の決め方の中に土門拳という人間の全体性があぶり出されている。…(中略)…平和と民主主義を旗印とした戦後ある時期の報道写真の典型がここにはある。

●読書人評=土門写真の原点示す。

●出版ニュース評=ドキュメンタリー写真というものの生命力を思わずにはいられない。

●夕刊フジ評=残酷な現実を受けとめている、いたいけな表情が胸を打つ。

●人民の星評(1997年4月29日)=石炭から石油へのエネルギー政策転換によってもたらされる炭鉱の悲劇を、筑豊の子どもたちのあるがままの姿を通じて伝えた歴史に残る写真集である。
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