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意釈 黄帝内経太素 【内容紹介】本書「黄帝内経太素解題……丸山敏秋(北里研究所付属東洋医学総合研究所客員研究院)」より | |||
「素問」「霊枢」の伝来の過程で、どうしても見過ごせない一書がある。それが「太素」にほかならない。見過ごせないというのは、素・霊二書を類別編纂した「太素」こそ、現存する最古の「黄帝内経」のテキストだからである。 さらに重要なことに、「太素」には楊上善という唐代初期の人物による綿密な注釈がほどこされている。「素問」の初期の注釈者としては南北朝時代の全元起がおり、その注の内容は断片的に知ることができるものの全貌は明らかでない。他方「霊枢」の本文に関しては「太素」における楊上善注が最古である。 中国医学史上きわめて貴重なこの「太素」は、幻の古典といってよい。のちに述べるとおり、本書は中国本土で早くに失われてしまった。ところがその抄本(写本)がたった一部、わが国京都の仁和寺に秘蔵されていたのである。江戸時代後期にそれが発見されて大騒ぎとなり、幾度も転写され活字本まで出されたにもかかわらず、門外不出の国宝に指定されたその原本は、ごく最近まで姿を公にしなかった。 1981年、小曽戸洋氏を中心とした筆者を含むグループは、仁和寺の了解を得て幻の秘本の影印出版にこぎつけることができた。ここに「太素」は、ようやく永い眠りから完全に目覚めたのである。そしてこのたび、斯界の碩学小曽戸丈夫氏の御努力が実り、楊上善注を含む「太素」すべての和訳が完成するに至った。この壮挙により、「太素」は現代に蘇生したと称しても過言ではなかろう。 | |||
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