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アユ学
アユの遺伝的多様性の利用と保全

谷口順彦池田実[著]

3000円+税 四六判上製 352頁 2009年10月発行 ISBN978-4-8067-1385-2


遺伝学でわかったアユのすべてを、最新の研究データをもとに解説
アユの過去(遺伝子)を解明すると、アユの未来がみえてくる。
全国のアユの類縁関係などから、意外な事実がわかってきた。
天然アユを保全・保護するための、漁業、養殖、遊漁、自然保護に携わる人の必読書。
研究者のために、これまでのアユ研究の論文リス、研究・分析法を巻末に収載。

【目次】


はじめに

第1章 アユのルーツと生態
   孤高の系統
   魅惑の生態
   成長と生産力

第2章 海産アユと湖産アユ――両側回遊型と陸封型
   天然の品種
   環境の影響を受ける特徴
   遺伝的要因で決まる特徴
   放流された琵琶湖産アユには再生産の能力があるか?

第3章 希少種リュウキュウアユ
   瀕死の現状
   奄美大島の東西集団の遺伝的な違い
   リュウキュウアユの保全策

第4章 ダム湖で発生した新しい集団
   アユが陸封化されたわけ
   陸封アユの系統の鑑定
   野村ダム湖のアユの由来は?
   八田原ダム湖の陸封アユの謎
   沖縄のダム湖で再生したリュウキュウアユ

第5章 天然海産アユの地域性
   アユの遺伝的分化を解明する新技術
   日本列島集団の遺伝的多様性
   海産アユ集団の地域性
   島嶼部のアユはどこから来たのか

第6章 中国のアユ‐――東アジア集団の地理的分化
   中国アユの分布と標本採集
   地方集団間の遺伝的分化
   各地のアユ集団の類縁関係
   中国アユは新亜種か?
   ◎コラム:中国のアユ採集旅行紀

第7章 稚魚は母川回帰するのか?
   仔稚魚期の分布調査法
   マイクロサテライトDNAによる集団分析
   ミトコンドリアDNAによる分析
   仔魚期の移動と分散
   海域内の移動と分散

第8章 放流魚を追跡調査する
   放流魚はどのくらい混合しているか?
   放流魚の追跡調査――吉野川の事例
   血縁度によって個体レベルの系統を知る
   琵琶湖産アユと海産アユを個体レベルで判別する
   らしさ(尤度比)にもとづく個体判別

第9章 人工種苗の健苗性
   健苗性とは
   人工種苗の健苗性と問題の背景

第10章 健苗性にかかわる遺伝的な要因
   人工種苗の遺伝的多様性の変化
   継代数と遺伝的多様性レベルの関係
   懸念される継代による近親交配の影響
   野生集団添加による継代親魚集団の遺伝的補強の試み
   遺伝的多様性を維持するために、ただちに対応すべきこと

第11章 健苗性にかかわる環境要因
   種苗特性に影響をもたらす環境要因
   天然遡上アユと人工種苗アユの生理的特性の比較
   自然河川に放流した後の変化
   人工種苗の健苗性をいかにして向上させるか

第12章 これからの人工種苗アユの使い方
   アユの経済的な価値
   アユの種苗特性と使い分け
   どの種苗をどこへどのように放流するか
   各地のアユ集団の遺伝的管理指針

第13章 アユの恵みを享受しつづけるために
   多様性保全の意義
   リスク評価とリスク管理の考え方
   種苗の流通経路と魚病の拡大の問題
   河川環境の保全と資源管理にかかわる問題
   アユの価値とダムの価値

おわりに

巻末付録
付章1 メンデル集団と集団研究法
   1 遺伝子プールの考え方
   2 ハーディー・ワインベルグの法則
   3 メンデル集団では遺伝子および遺伝子型頻度は毎代不変
   4 ハーディー・ワインベルグ平衡の検定
   5 サンプル間の異質性検定
   6 集団構造解析法
   7 有効な集団の大きさの意義
   8 集団の有効な大きさと近交係数
   9 遺伝的多様性と漁業資源
付章2 アユのDNA多型の検出および分析マニュアル
   1 DNAの抽出
   2 マイクロサテライトDNA分析
   3 ミトコンドリアDNA調節領域のPCR-RELP分析
付章3 水産庁のアユ種苗放流指針
用語解説
参考文献

索引