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飼育係が見た動物のヒミツ51

多摩動物公園[著]

1600円+税 四六判 240頁 2008年5月発行 ISBN978-4-8067-1369-2


誰も知らない動物たちの新しい顔を発見!
毎日動物に接している動物園の飼育係だからこそ見えてくる
動物たちの姿を、エピソード満載で語ります。
明日から動物を見る目が変わるかも?

【目次】


ようこそ、多摩動物公園へ!
動物園マップ

■アフリカ園
  ライオン………………………動物園での子育て、最大の難関は?
  サーバル………………………3メートルジャンプで飛んでいる鳥をつかまえる
  チーター………………………速さの秘密は爪にあり!
  フラミンゴ……………………子育てに熱心すぎてメスにふられた!
  アフリカゾウ…………………ゾウが苦手なことは?
  ダチョウ………………………サバンナ放飼場いちばんの荒くれ者
  ペリカン………………………のど袋の秘密
  シマウマ………………………攻撃は最大の防御なり?
  キリン…………………………長いのは首だけじゃない! 舌に注目
  シロオリックス………………サバンナ放飼場デビューをはたした赤ちゃん
  チンパンジー…………………新人飼育係泣かせの知性派

■アジア園1
  オランウータン………………大人気、オランウータンのスカイウォーク
  スリランカゾウ………………多摩動物公園オープンからずっといます
  ムフロン………………………ぼくはヒツジの祖先です。
  トラ……………………………狩りに役立つ縞模様
  オオカミ………………………群れの絆と厳しい掟
  ニホンカモシカ………………季節にあわせて衣装をかえる
  シフゾウ………………………頭はウマ、体はロバ、ひづめはウシ、角はシカ?
  ユキヒョウ……………………体重の3倍もある獲物をしとめる
  レッサーパンダ………………直立二足立ちで人気者
  ゴールデンターキン…………荒っぽいけどさみしがり屋です
  マレーグマ……………………野生は森を追われ絶滅寸前

■オーストラリア園
  コアラ…………………………母親の糞は赤ちゃんコアラの離乳食
  エミュー………………………メスは産むだけ、オスが卵を温めヒナを育てる
  アカカンガルー………………初めて袋から出た日が誕生日
  ウォンバット…………………ちょっと攻撃的なヤツ。
  ワライカワセミ………………一度は聞きたい笑い声

■アジア園2
  インドサイ……………………世界に2000頭しかいない、貴重な動物
  イヌワシ………………………ヒナのピンチ−−台風で巣が落ちた!
  シロフクロウ…………………昼間でも活動するフクロウ
  ニホンコウノトリ……………プラスチック製ジョウロが人工くちばしに早がわり
  モウコノウマ…………………地球上唯一の野生馬はモヒカン刈り?
  モグラ…………………………土から出るとパニックに
  タヌキ…………………………タヌキは決まった場所に糞をする
  コンゴウインコ………………舌を手術したインコ
  エゾヒグマ……………………冬ごもりもどきをするヒグマ
  ニホンザル……………………日本にだけ生息するサル
  ニホンイノシシ………………意外な人気者、その名はキントン
  テンジクネズミ………………モルモットの名前で知られています
  マレーバク……………………体の流線型と白黒模様に注目!
  カモ……………………………園のカモはおされ気味
  ムササビ………………………天狗の正体、じつはムササビ?
  トウキョウトガリネズミ……唾液に麻酔成分が?

■昆虫園
  グローワーム…………………洞窟を星空に変える虫
  コノハムシ……………………擬態する昆虫
  チョウ…………………………昆虫生態園のチョウは冬も元気
  ナガサキアゲハ………………翅の模様でわかる出身地
  ハキリアリ……………………葉っぱを頭の上にのせて運ぶアリ
  ホタル…………………………日本には50種以上もいる
  マダガスカルオオゴキブリ…これがゴキブリ!? 小学生に大人気
  ツマベニタマムシ……………小笠原諸島の固有種


■コラム
  環境エンリッチメント
  ゾウのひっこし
  動物はどうやって運ぶ?
  アフリカの動物が共存するサバンナ放飼場
  ある飼育係の一日
  ウンチから見えてくるもの
  動物たちの戸籍
  動物と人の安全を守る動物愛護法
  検疫は動物病院の大事な仕事
  繁殖に力を入れる動物園
  自然に近い環境で動物を見せる
  赤ちゃんコアラ誕生
  大型動物が死亡したとき
  獣医師という仕事
  冬眠と冬ごもり
  365日、動物園は休みなし……夜の動物園・休園日の動物園
  飼育の担当はどう決まる?
  手のりアオダイショウのヒロちゃん
  動物園の仕事
  「こんなときの法則」で動物園を楽しもう!

はじめに

ようこそ多摩動物公園へ

 動物の飼育は試行錯誤の連続です。
 冬にバッタを飼うにはどうしたらいいか、カンガルーの病気を治すには、チーターを繁殖させるためには、……。
 飼育係は、動物園で暮らす動物たちのメッセンジャーです。
 この本では、51種の動物について、日々、動物に接している飼育係ならではのとっておきの話を紹介しています。
 エピソードや苦労話、一味違った動物の話などから、これまで気づかなかった動物たちの見方、動物園の楽しみ方、そして多摩動物公園がこれまで行なってきたさまざまな取り組みを知っていただけたらと思います。

 多摩動物公園の特徴は、50ヘクタールにもおよぶ、自然の豊かな広い敷地を活用した動物園づくりにあります。
 たとえば、サファリパークの原型といわれているライオンバスに乗って、群れで暮らすライオンたちを間近に見ることができたり、樹上で生活するオランウータンの能力をいかすようにと考えられたスカイウオーク−−地上15メートルの高さに長さ150メートルにわたって張られたロープをつたってオランウータンが移動する姿を観察することができます。
 昆虫生態園も目玉のひとつです。動物界の主要な一員である昆虫が動物園にいないのはおかしいということから、動物園にある昆虫館として日本で最初に誕生しました。
 動物園は、野生生物と人間との架け橋です。ただめずらしい動物を見てもらうだけではなく、多くの人びとに野生生物と人間との関係を考えてもらえるような動物園づくりが、今、求められています。
 そうした動物園をめざして、多摩動物公園はさまざまな取り組みを行なっています。  たとえば、遺伝子や種の生物多様性の保全への貢献。日本で最初にコウノトリの飼育・繁殖に成功したことなどはその表われだと思っています。また、世界各地の動物園と協力し、絶滅の危機ある動物の繁殖にも務めています。

 動物園というと子どものための施設、家族連れで行く場所というイメージがありますが、多摩動物公園の楽しさは、子どもから大人までじっくり味わえるところにあります。
 まずは本書を手に、一通り歩いて観てください。なるほどとうなずける豆知識があれば、見方も違ってきますし、おもしろさが倍増します。
 きっと新しい発見とふっと心に流れこむ喜びがあるでしょう。
 そして動物園まで足を運ぶことができない方にも、本書を読んでいるうちに、まるで実際に動物園を歩いて、飼育係の話をじかに聞いている気分を味わっていただけたら幸いです。