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姫たちの伝説 古事記にひらいた女心

【書評再録】


●朝日新聞評(1994年2月6日)=登場する姫たちを通して、性に関する言語の豊かさ、女性の力による政治の存在などを読み解き、古代社会の姿を推理している。

●朝日新聞評(1994年4月24日)=30余年前、喜劇「がめつい奴」の子役で当たりをとった。長じてテレビドラマ「お荷物小荷物」などで活躍。歌手としても「あなたの心に」がヒットした。そして、テレビの司会者、作家、参議院議員……実に多彩な歩みだ。
そんな千夏さんが、古事記の現代語訳と解説に取り組み、四年前に「新・古事記伝」を書き上げた。そして今度は、古事記に登場する多数の女性を一堂に集め、その生き方をわかりやすく写し取った。
「男性中心に書かれた古事記に、断片のようにちりばめられた姫たちの記録。きっと記録に残らないたくさんの伝承があったんでしょうね。もし、削られないで書かれていたなら、姫たちはもっとすごく輝いていたでしょう」

●信濃毎日新聞評(1994年4月24日)=「古事記を読んで、意外だったのは、登場する女性たちがとっても元気だったこと。ヘニャヘニャした人ばかりかなと想像していたのに。すっかりうれしくなっちゃって、翻訳中から女の人だけをクローズアップしてみたいと思っていました」
こうして出来上がったのが「姫たちの伝説」だ。古事記の中で多少とも物語のある女性すべてに、名前しか出てこない女性も加えた77人を取り上げた。
歴史は光を当てる角度によって、多種多様な顔を見せる。

●歴史と旅評(1994年6月号)=歴史の先入観にとらわれず、のびのびとした想像力で古事記世界の魅力や多様性を語る。本書のキーワードは活力である。しかも女、姫たちの、である。
アマテルや弟橘姫など多少とも物語のある姫、名前だけでもその名に意味を付加された姫など実にさまざまだが、そうした姫たちは「誘」「怒」「美」「叛」「産」といった言葉に象徴されて、それぞれのストーリーを構成している。
だから姫たちの多彩な風景が要領よく整理されていて、読むほどに古事記神話の複雑な筋書きがわかり、知らぬまに古事記通になるという寸法だ。女古事記の世界を知るには便利。

●エコノミスト評=誰も描かなかった世界。読者に、本の楽しみと「古事記」の楽しみとを、2つながらに提供する。

●オリーブ「赤木かん子のYA講座」(1994年7月18日号)=なんでここでいまさら「古事記」かというと……へっへっ、なーんと、あの中山千夏さんがここんとこずーっと「古事記」の新解釈をしてましてね、それがおもしろいんだよ。最新刊で、いわば番外編の「姫たちの伝説」というのを出してくれたんだけどね、これがいちばんとっつきやすいと思うから、まあ試しに読んでごらん。メチャ、おもしろいんだから--。

●パトス評(1994年4月号)=中山千夏が今度は、彼女の古事記への愛着を見る思いの、同時に「へえ、古事記っておもしろいねえ」を実感する魅力的な一冊を出した。
古事記中の多少ともお話のある「姫たち」全員を登場させ、中山千夏流解読を試みている。
姫たちの姿を楽しく読み進むことができるし、そのうち古事記神話の筋書きがわかってくるから、ちょっとした古事記通になれそうだ。

●ダ・ヴィンチ評(1994年5月号)=じつは、古事記って、おもしろい。中山千夏の最新刊。
ナンパをかける女神、姫たちの反乱、恋歌の話から女性実力政治家の存在まで、はつらつとした古代の女たちの物語をユーモラスな語り口で紹介している。山口はるみの装画・さし絵も見逃せない。

●ふぇみん評(1994年6月5日)=古事記中多少とも物語のある姫たち全員を登場させ、楽しく追っている。「書き方にまどわされないよう注意して読むと、ちょっとしか出てこない姫たちの一言が、にわかに意味を持ってくる」と著者はいうが、その慧眼に脱帽。読み進むうちに、古事記神話の筋書きが何となく掴めてくる。

●婦人展望評(1994年6月号)=古事記中多少とも物語のある姫たち全員と名前だけの姫もあわせて77人を登場させ「男系ヤマト朝廷一本槍」と思われる古事記にこんなに元気・新しい・すごい姫たちがいたのかと驚きつつ読ませる。
「ノロイをとかれた眠り姫たちが、次々息を吹き返した」かのように活躍し、男性学者の解釈による従来の古代の女性像を覆してみせた著者は、古事記研究を始めてすでに十数年。現代語全訳・解説書「新古事記伝」もあり、こちらもあわせて読めば、古代史への夢がさらに広がるのではと思わされる。

●本の本評(1994年夏号)=女優、歌手、司会者、作家、参議院議員……と、実に多彩な活躍をした中山千夏さん。そんな彼女が古事記に登場する姫たち77人すべてを取り上げ、それぞれの物語を、女の立場から生き生きと描き出した。
なにものにもとらわれず、自由奔放に、はつらつと生きる古代の女たちの物語がユーモラスに語られていく。
読む者の心をひきつけ、同時に、男が主役の古事記に慣れた人々には、新鮮な驚きを与えることだろう。

●出版ニュース評(1994年6月下旬号)=古事記にほんの少ししか出てこない女たちの姿の本。古事記は男の手になるものだし、歴史書は支配できた者たちの決算捏造の性格を帯びている。そこで切り込むにあたり、あくまで女の見方に固執して、「まわりくどい言い方をしない」古事記を読み解こうと試みる。

●ブックポート81評=古文の授業は苦手中の苦手。今さら「古事記」なんてと思っているあなたに一冊のユニークな本を。神代、高千穂王朝時代、ヤマト時代までに登場する77名の姫たちの伝説。女と男の物語。著者の豊かな想像力は、読者を古代史の不思議の世界へ旅立たせます。

●高校の広場評(1994年夏号)=古典をこれまでの垢にまみれた読み方から解放して、現代に対して新しい見え方を提示することは、現代のような転形期には切実に求められる仕事だ。過去の読みかえこそが未来に対して新たな希望を形成する。現代が別様に見えるためには、過去の再検討から始めるしかないように見える。その貴重な試みのひとつだ。
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