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[新]人体の矛盾

【書評再録】


●北海道新聞評(1994年2月6日)=人体は調和と統一を保っているように見えるが、1つ1つの器官の由来をみると、実に35億年の歴史を持つものから、現在なお作られつつあるものまで、新旧さまざまだ。本書では血液、背骨、手足、肺、毛根、大脳皮質などを起源の古い順にその歴史をたどりながら、進化の過程、人体のもつ矛盾した機能や疾患を解く。ヒトが失ったもの、獲得したものの変遷は、人体がまさに器官の寄せ集めであることを実感させる。

●教育新聞評(1994年6月20日)=人体のいくつかの器官について、その起源の古いものから新しいものの順に歴史を振り返り、人体の摩訶不思議さを浮き彫りにしたものである。
ヒトはなぜ立っているとき、膝をのばしているのか、指が五本なのはどうしてなのかなど、ふだんあまり意識していないことを改めて知ることができる。
人体の進化がわかる本書は、興味深い一冊である。

●日本農業新聞評(1994年2月18日)=人の病気の背景には、人体の古い構造物と新しい構造物の間の不調和や、矛盾があります。それらは「器官の起源と、人体がたどった多岐にわたる歴史の産物にほかならない」という理学博士の井尻正二氏と歯学博士の小寺春人氏が、ナゾの多い人体を解明してくれる本です。

●週刊文春「私の読書日記」欄(1994年)=人が猿と違ってハダカになった理由とか、脳がだんだん大きくなってきた理由とかについて各種の説が紹介されている。

●日経メディカル評(1994年3月10日号)=人体の各器官はさまざまな起源を持っている。その器官の間の新旧の違いこそ、生命現象の本質があると説く。背骨、腎臓などいくつかの器官を取り上げ、起源の古い順にその歴史を振り返った。

●悠(はるか)「私の本棚・寺木秀一・八王子市教育委員会指導主事」(1996年7月号)=書架を替えたりすると、元に戻した本の配列がばらばらになりその後は捜し出すのがきわめて困難になる。どこかにあるのは確実なのだが、急ぐときは同じ本を購入してしまう。
本書はそのような経過で、旧版から合わせると4冊あり、25年間読んでいる愛読書である。
読者は、自分自身の体の中にある壮大な生命の歴史を知り、人体の矛盾に気付き、今後も付き合い続ける我が「人体」を改めて見直すことになるだろう。

●看護評(1994年5月号)=本書を読んでいると、人体の甘いも辛いも知り尽くした熟達した教授に、解剖の授業を通してヒトの進化の歴史を、やさしく手ほどきされているような感覚になる。
それでいて、1つの細胞から今日の人体が作り上げられるまでの35億年という、とてつもない進化の時の流れを実体として認識し、はるか彼方に生命の起源を見やっている。
進化とは何か、そして地球環境に生きる人類にとって、真の幸福とは何か、改めて真摯に考える機会となった。

●科学新聞評(1994年10月28日)=人体のさまざまな器官に、生物進化の目から新たな光を当て、そこに地球進化の歴史を見ようとするものである。一般向けに著された書物ではあるが、一介の医学徒の小生も大いに啓発されつつ読み進んだ。古生物学の深い知識を縦糸とし比較発生生物学的見方を横糸に加味しながら、血液、椎骨、歯、腎臓、肺、四肢、耳、毛根、胎盤、大脳、オトガイと、それぞれの由来・起源に縦横から迫る話の展開は見事である。
しばし時空を超えた世界に読む者を誘ってくれた。また、随所にちりばめられた文明史的立場からの考察には時にどきりと、時にはすっかり納得させられた。

●毎日ライフ評(1994年11月号)=ヒトの血液の塩分量が海水の塩分濃度と同じなのは、かつて海中で発生した名残りだといわれるが、血液・骨・歯・腎臓・肺・手や足・耳・毛根・大脳皮質などを例に、ヒトが直立するようになって生じた問題点を検討する。著者は比較生物学者と比較解剖学者。系統発生や個体発生との関連を含めて、なかなか興味深い。人間は自然環境を変えてきたが、いまや逆に作用されて、苦しんでいる。

●日刊ゲンダイ評(1994年3月12日)=人のからだの成り立ちを、系統発生(30数億年前の一個の細胞からヒトに至るまでの進化の道筋)と、個体発生(一個の受精卵がヒトになるまでの道筋)の両面から、わかりやすく、しかも面白く解説する。25年前の旧版以来、ロングセラーを続けた人気の本でもある。

●地質学雑誌評(1994年3月号)=旧版以降の古生物学をはじめ関連分野の進歩を考慮して、新たに執筆されたもの。それぞれの器官の構造と機能を比較解剖学の視野から解説しながら、発生と進化を論じている。最後の章では、人体の矛盾を通して古生物学的進化論についての著者の独自の思想を展開している。巻末の随所に「人体こぼれ話」として、比較解剖学の興味深いトピックを挿入して、読者の理解を補い、巻末に地質年代と動物群の変遷を表示している。
本書は単なる人体の解剖学に関する解説書ではなく、著者の古生物学進化論を人体の器官を例として展開したものであり、古生物学者にたいしても医学者にたいしても、示唆に富む多くの問題が記されている。

●地団研そくほう評(1994年4月号)=本書では、あたかも地質学者が、それぞれの地層の形成された地質年代を明らかにしていくかのように、化石および比較解剖学的事実から、ヒトの血液、背骨、歯、腎臓、肺、手と足、耳、体毛、胎盤、大脳皮質、オトガイを例にとり、それぞれの器官が出現した地質年代を明らかにし、同時に、あたかも日本列島の地質構造発達史を復元するかのように、生命の発生からヒトの出現に至るまでの35億年にわたる進化の道すじをまざまざとあぶりだしています。
解剖学、古生物学に興味を持つ会員は言うに及ばず、「理論の学習会」のテキストとしてもお薦めしたい。というのは、本書であぶりだされているヒトの進化の道すじは、弁証法そのものであり、知らず知らずのうちに「弁証法の極意」を学ぶことができる、と思われるからです。さらに、歴史的なものの見方で現代人の病気の原因を考察する、という具体例は、応用地質の会員にも参考になるものと思われます。
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