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新・環境はいくらか

【書評再録】


●朝日新聞評(1992年4月5日)=地球サミットの準備会議でも、議論は環境の維持・回復にいくらの資金が必要で、それを誰が負担するかに議論が集中している。『環境はいくらか』は、正面からこの問題に取り組んでいる。

●土木学会誌評(1991年2月号)=開発途上国における開発プロジェクトが環境資源に与える影響を貨幣換算して経済評価する技法を解説したものである。最も一般的な手法に関して、発電所、工業開発、森林開発などのケース・スタディを行っている。これらの技法は、開発プロジェクトの初期段階で合理的な環境対策を講じるために、組織的、計画的な分析を行い、問題点をできる限り早期に明確にする技法として、アジア開発銀行が開発したものであり、実務経験に基づく提案となっている。開発途上国の開発プロジェクトに携わる人に限らず、環境への影響を貨幣価値化する技法の概説書として利用できる。
【旧版に寄せられた書評】

●京都新聞評(1991年4月15日)=環境を汚すな、保護せよと叫ぶだけでは、どのくらい大切なのか、保護することでどの程度社会に役立っているのかが明確ではない。本書は開発途上国の多目的ダム建設の大プロジェクトを例に挙げ、環境への良い・悪い双方の影響を貨幣の単位で表し、そのプロジェクトの総合的経済評価の算定を試みたもの。まず開発以前の環境の質、すなわち大気、水質、土壌の養分、動・植物の生態を厳しくチェックし、プロジェクト実施の結果起こる人間の健康面や福祉への影響、企業としての経済的得失を金額で割り出す。環境破壊の是非を問う新しい考え方だ。

●日経産業新聞評(1991年6月3日)=林野を切り開いて工場を建設する計画が浮上した場合、開発すべきか、手付かずの自然を残して環境を守るべきか---著者らは両者の言い分を客観的に冷静に評価するための物差しとして「貨幣単位」を導入し、実際にあった五つの開発プロジェクトを検討している。
本書は、もともとはマニラに本拠を持つアジア開発銀行の内部資料用として作成、それを一般向けに出版した。「経済的評価の限界」は認めた上での分析だが、興味深く読むことができる。

●環境情報科学評(1991年20-4)=経済学的な手法に依拠した環境を評価する手法についての手引書である。
本書はアジア開発銀行の報告書として執筆された。現在、地球環境問題を中心として、環境問題への関心が高まっている時期であり、また環境についての配慮を含めた日本のODAによるプロジェクトのあり方も問われている時期であることを考えると、時宜を得た出版といえよう。

●週刊ダイヤモンド評(1991年4月20日号)=“環境”は、一般には、貨幣単位では計ることのできない外部経済として扱われる。しかし開発を行うときには、環境も、コスト・パフォーマンスの観点から評価しなければならない。その際に有効な指標は、やはり貨幣単位である。
もともと、アジア開発銀行の内部用ガイドラインとして作られた本書は、この難問にあえて挑んだ力作である。
ホノルルにある東西文化センター環境政策研究所の研究員が中心になって作り上げた本書を手にすることで、単なる環境保護主義ではなく、利益至上主義の企業行動でもない、新たな環境と開発への視点を得ることができるであろう。

●アースエイド評(1991年7月号)=開発計画にあたって環境に関する費用をどのように計算するか、その方法を紹介。やや専門的だが、興味深い一冊である。

●赤旗評(1991年6月3日)=アジア開発銀行が開発プロジェクトによって生じた環境への影響を経済数量化・貨幣価値化するための一連の評価技法を提示し、そのことによって社会的「説得力」をもたせようとする同行内部用の報告書である。
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