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沖縄の自然を知る

【書評再録】


●ソトコト(2003年5月)
沖縄の生態系は、海に囲まれているため独立性が強く、閉鎖的な特徴を持つ。
従って人間活動により侵害されると途端に本来の姿が失われ、単調で人工的なものに変貌する。
沖縄の地史、リュウキュウアユなどの生物、赤土汚染など、沖縄の自然と人間による生態系破壊について深く掘り下げた一冊。

●WWF・世界自然保護基金評=沖縄の自然について生態系や動植物をわかりやすく紹介。また沖縄で育まれてきた自然と人の関係や公共事業による自然破壊、各地で住民が繰り広げた保護運動についての解説も充実。沖縄の自然についての最新情報をという方にはおすすめだ。
旧版「ニライ・カナイの島じま」

【書評再録】


●朝日新聞評(1989年11月28日)=沖縄在住の20人の科学者が専門を分担し、素人にもわかりやすいように沖縄の自然の特徴を解説し、置かれた状況を知らせることによって保護の重要性を認識してもらおうとの意図で書かれたものである。無計画で急激な自然破壊に対し、抑制された筆致の底からにじみ出る憤りや悲しみに強い共感を覚える。「魚湧く海の畑」といわれ、奇跡的にオニヒトデの食害をまぬがれたわが国最大の堡礁、稀少なアオサンゴ大群集があり、海象や防災面からも適地とは考えられないのに、「なぜ白保だけが」という慨嘆は痛切である。
沖縄の生物相のきわだった特質は、固有種が多いことである。イリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナは世界的な希種だが、昆虫ではヤンバルテナガコガネをはじめ1140種、高等植物で130種の固有種を数える。これらの生存が農薬汚染、農用地の拡大、森林伐採、ダム建設などによって脅かされ、リュウキュウアユなどすでに絶滅した種もある。島国だけに破壊力は強大で、また、本島の20%を占める軍事基地問題と複雑にかかわり合っていることが、一層事態を深刻なものにしている。
自然保護は情緒的な主張ではない。「自然生態系と人間生態系の対立をのりこえて、自然と人類との統合された生態系についての理念」の唱道だと、筆者の一人木崎甲子郎はいう。平和で美しいニライ・カナイの島を愛し存続を願う人の心が切々と伝わってくる。それはただ沖縄だけの問題ではなく、日本全体の問題である。

●朝日新聞評(1988年11月21日)=国際的に注目を集めている「白保サンゴ礁」から、米軍の軍事演習による自然破壊まで広範な問題を取り上げている。
同書では、特異な生物相をもつ亜熱帯の島じま、琉球列島のおいたちや、沖縄開発と表裏一体となった自然破壊の歴史を克明にたどる。「やんばるの森」に暮らすノグチゲラ、ヤンバルクイナをはじめ、琉球列島の固有種が絶滅の危機にさらされている現状を多角的に紹介しながら、「東洋のガラパゴス」が直面している問題の全体像を浮かび上がらせている。

●沖縄タイムス評(1988年10月31日)=20人の研究者が、16のテーマで沖縄の自然とその保護について興味深く語ってくれる。堅い内容の本であるが、時にたとえ話があり、時に俳句があり、平易にわかりやすく書かれている。一つ一つの論文が独立しているので、読者はどれから読んでもいい。読んでいくほどに、沖縄の自然保護の大切さがわかり、一般の市民、学生、行政官それぞれに読んでほしい本である。

●琉球新報評(1988年10月31日)=アユ、マングローブのほか、本書にはサンゴ礁や海と陸の接点である潮間帯の生き物たち、森の動植物・虫たち・飛びまわる鳥たちが取り上げられています。
沖縄のたくさんの島じまは共通性を持ちながら独自性も強く持っていると思われます。島じまの地球上での位置関係、とくに大陸や大洋との位置関係、黒潮のこと、そして島になった由来のおもしろさ、地下水なども本書に取り上げられています。
自然をどう理解し、今後沖縄をどうするのか、そのことを考えるため、専門家によってわかりやすく解説されている本書を、多くの方々が手にされることをおすすめします。

●北海道新聞評(1988年10月31日)=ニライ・カナイは沖縄の信仰にある神々の住む世界。神々は、ここから人間界を訪れ、豊穰をもたらす。神々の恵みを受けた島・沖縄の自然について、琉球大学の研究者を中心とした20人が、それぞれの専門分野について分担執筆し、沖縄の自然の全体像と自然破壊の現状、どのような自然保護が必要なのか、をわかりやすく説いている。200万年前からの琉球列島のおいたちも、小さな島での開発がもたらす複雑な自然破壊の仕組みも、たくさんの図表や統計も苦もなく読めて胸におさまる。行間から、沖縄に生き、沖縄を愛する執筆者の心が読み取れるからだろう。

●アニマ評(1989年1月号)=まず、沖縄が自然史、あるいは自然誌的にどのような特質をもつのか知らなくてはならない。本書は、その視点にたって地質、植物、動物、水産などの分野から沖縄の自然を浮き彫りにしている。
そのなかで著者たちが強調しているのは、沖縄は多くの島から構成され、なおかつ亜熱帯に属すという点である。このどちらも弱い自然であり、いったん破壊されると回復まで時間を要するのである。
沖縄の自然を検証しながら、その保護と開発という困難な課題へ真正面から取り組んだ好著である。

●日刊ゲンダイ評(1988年11月8日)=急ピッチで進む開発のため、沖縄では森林が次々と減っている。このことは、単に緑が失われるというだけではなく、海にまで大きな影響を与えている。植物がはぎ取られた山肌からは、強い雨が降るたびに赤土が流れ出し、コバルトブルーの海を赤く汚してしまっている。赤土は、海底に沈殿し、風波が強まると海を真っ赤に染める。そして、サンゴを傷めつける。ひとたび荒らされた自然は、なかなか元には戻らない。沖縄の自然破壊に警鐘を鳴らす自然科学者たちの現地報告書。

●女性セブン評(1989年3月9日号)=なぜいま沖縄の自然保護かを広い視野で論じてみせた好著。
国際的にも注目されている沖縄の自然保護の必要性、森林、野生動物、サンゴ礁、マングローブと潮間帯、生物の分布をはじめ、海の汚染、地盤と地下水、さらに基地の中の沖縄、行政と科学者の責任などについての、第一線の方々の簡潔な形での問題提起が本書の特徴である。
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