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日本海の成立 生物地理学からのアプローチ

【書評再録】


●地理評(1975年2月号)=本書は生物地理学の分野からの日本海発達史へのアプローチである。かなり大胆な推論と思われる点も少なくないが、それだけに興味深い内容である。地理学・地質学・生物学関係のみでなく、広く一般の人びとに紹介したい。

●ネイチャー・スタディ(1975年1月号)=とても面白い本だ。書名のサブタイトルが「生物地理学からのアプローチ」となっているように、この本は、そこに棲むさまざまな動物たちにたいする生物地理学的考察の結果から、日本海がどのような地史的経過をへて今日にいたったか、その「通史」を大胆にえがききったものである。地質学あるいは地球物理学の手法では解明できない空白を、生物を材料にして埋めよう、という積極的な意図に満ちている。淡水湖としての出発からはじまって、氷河時代をくぐり抜け、後氷期に朝鮮海峡が開けるまで、著者独特の見解によって「日本海」という地形単位の歴史とそこに棲む生物相の変遷が見事に統一的に解釈され提示されている。このように一つの考えに立脚して複雑な現象を破綻なく説明しきる、しかも時代毎の像を描ききるというのは、これまであまり日本人研究者のよくするとこではなかったようだ。「通史」の試みとしての評価が与えられるべきである。

●赤旗評(1975年1月20日)=現在の日本海とその周縁地域にみられる生物相をよりどころにして、生物地理学の立場から、日本海のなりたちを解き明かそうとした、ユニークな本である。生物学を志してスタートした20年前に発想した「青年の夢」を、ひたすらに模索しつづけた成果を、みごとなロマンとして、科学的推理の結論として、ともかくもまとめあげた労作として評価し、独自の道をきりひらいた著者に敬意を表したい。
ユニークな科学専門書として、今後の日本海研究に役立ち、また、生物地理学のひとつの成果として広く活用されることを期待したい。
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