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みんなの保育大学シリーズ10
鼻のしくみと子どもの成長

【内容紹介】本書「はしがき」より


 私は人の顔には二つの特徴が表われていると考えております。一つはおでこの額で、もう一つは顔のまん中に飛び出ている鼻です。だれでも見ればすぐわかるこの人の顔の二つの場所が、なぜ人の特徴なのか、どうしてできてきたのか、そしてなぜ人の鼻は病気になりやすいのかといったことなどを進化や発育成長の点からお話したのをまとめたのがこの本です。
 この講演の際ただ話すだけではと考えて、手元にありますヒトの進化の猿人から現代人までの骨標本コピーや、2000年前の東西民族の肖像、また鼻の話ですから誰でもすぐ思い出すクレオパトラの顔の刻んである当時の貨幣などを並べて、見ていただきながら、お話をしてみました。
 このクレオパトラの銀貨の方は有名なエジプト王朝最後のクレオパトラ7世のもので、とても状態がよいので彼女の顔や鼻の状態がよくわかります。コインと一緒に表紙をもう一度よくご覧になってください。彼女クレオパトラ7世の自殺する39歳より一年くらい前に鋳造されたものですが、クレオパトラの金貨といわれるものは、同じクレオパトラでもクレオパトラ1世のものです。7世には金貨は作られていないのです。
 この1世は7世に比べるとはるかに美人ですが、7世の方がずっと有名ですね。非常な才女であったといわれていますが、それもおでこの額の中の脳みその働きによるものです。
 脳の働きによって人は文化文明を築き上げ、それを気楽に使いこなしていますが、その脳のために鼻の中に歪み曲がりが生じ、その歪み曲がりを多少でも少なくしようとして、鼻が前へ隆起してきて立派な外鼻が生まれてきたと、私は考えています。表側としての人らしい顔、立派な鼻のできてきた裏側の鼻の中には、あまり芳しくない状態があるのです。
 脳の作り出した文化文明にいろいろの矛盾が認められるように、進化してできてきた人の顔や鼻の中にも似たような矛盾が見られるのは、たいへん面白いといっていいのか、深い意味のあるものがかくれていると思います。人の顔の中では一番最後にできてきた人らしい立派な鼻の、その中に歪み曲がりが生じてしまったのも、文明の中の種々の矛盾を暗示しているようです。ヒト、人、人間、人類の在り方を考えさせられる現象ですね。本書では、こういったことにも触れてみました。
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