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みんなの保育大学シリーズ6
内臓のはたらきと子どものこころ

【内容紹介】本書「序---斎藤公子氏」より


 三木先生は“生命の記憶”ということばをよくいわれる。われわれの遠い遠い祖先が感覚したものが、われわれの本能をつかさどる部分にしまいこまれていて、フト私たちの心にその記憶がよみがえる--海辺に立ってきく潮騒の音がなぜか私たちの心になつかしさを生むのは、--胎児のときにきいた母親の血液の流れる音に似ているためか--意識下にある遠い遠い時代に感受したものがよみがえる、そんな世界をとてもとても大切に考えておられるのである。
 子育ての上に、こんな遠いことも大切に大切にして、ひとりひとりの子どもを育ててほしい、という先生の人間性のやさしさが、この本をよむ人たちの心にひびいてほしい。いやきっとひびいてくれるものと、私は信ずる。
【内容紹介】本書「広がる三木成夫の世界---後藤仁敏氏」より

 本書は、三木成夫氏の最初の著書、いわば処女作である。さくら・さくらんぼ保育園での講演を原稿化したもので、読みやすく、「三木節」とでもいうべき独特の自由奔放な話しぶりによって人びとを魅了している。同時に、それゆえに論理の飛躍するところもあり、そこがまた考えさせるものがあって、多くの読者に親しまれてきた。保育大学シリーズの中でも、異色の傑作といえよう。
 本書の出版後まもなく、三木氏は本書の「質問にこたえて」のなかでも予告していたように、二番目の著書として「胎児の世界」(中公新書)をあわらし、この二つの著書によって、氏の名と思想は、広く知られるようになり、講演や執筆に多忙な日々をおくることになる。そのさなかの1987年8月、氏は突然に脳内出血にみまわれ、そのまま意識が戻ることなく逝ってしまったのである。それは本書を出版した、わずか5年後の出来事であった。
 その突然の死に、多くの人々が驚き、悲しみ、とくに三木氏の学問と思想がまだ完成された形になっていないことを嘆いた。しかし、氏の思想は、その生前よりもその死後においてより有名になった。三回忌を記念して追悼シンポジウムが企画され、以後隔年で三木成夫記念シンポジウムが開催され、回を追う度に参加者が増加している。著作についても、「生命形態の自然誌1」「海・呼吸・古代形象」「生命形態学序説」(以上 うぶすな書院)と次々と出版された。
 これらの本の出版は、さらに三木の思想を広めることになり、医学・生物学分野だけでなく、保健・保育分野から、芸術・思想分野まで、さまざまな人々が影響を受け、波紋の広がりはとどまるところを知らない。
 そのような折、本書の増補版の出版についての相談を受けた。本来なら、三木氏自身が本書を書き直し、改訂版として出版すべきところであるが、それがかなわない現在、本書を執筆した後の氏の思想、とくに保育・保健論に関する思想の発展をしめす文を、氏の書いたものから選ぶことになった。
 幸いなことに、三木氏は本書の出版以後、保育・保健関係の多くの雑誌に文をよせている。私は、その中から迷わずに、本書に収めた2篇を推薦した。それぞれ、本書の出版以後の氏の仕事が、氏自身の手によってみごとに要約されたものであるからだ。
 「胎内にみる四億年前の世界」は、ヒトの発生初期の胎児の顔面形態の変化に、脊椎動物5億年の進化の歴史の再現を見た、その感動の体験を述べたものである。受胎32日から38日までのわずか1週間に子宮のなかでおこるその劇的な変化を描いた三木氏のみごとな胎児顔面の写生は、「個体発生は宗族発生の象徴劇である」とする氏の思想を圧倒的な説得力で理解させている。「胎児の世界」のエッセンスである。
 また、「忘れられた25時--バイオリズムと眠りのメカニズム」は、本書の「胃袋感覚」と「夜型の問題--かくされた潮汐リズム」で萌芽的にふれている人間のバイオリズムと健康の問題を、深く論じたものである。私たちのからだには、24時間の「昼夜リズム」だけでなく、25時間の「潮汐リズム」がその深層に存在しており、それがさまざまなからだの不調の原因となっている。前の文で述べた子宮のなかでの上陸劇こそ、私たちが「潮汐リズム」との深いきずなをもっていることを物語るものであり、出産後の乳児の哺乳のリズムの変化のなかに「潮汐リズム」から「昼夜リズム」への移行がおこるのである。私たち人間に見られる「夜行性」や「冬眠」体質は、海に起源した生命40億年におよぶ長い進化の歴史に根ざしたものなのだ。そして、このように根の深い不調への対策として、からだのリズムを充分に理解したうえでの“愛の鞭”をタクトとしてふることが大切である、と結論している。
 私は、この二つの文のなかに、三木氏の人間存在への根源的追及と、からだの不調に悩む子どもたちや若い学生たちへの深い愛情を感じる。この増補版が、旧版と同様に、教育・保育・保健・医療などにかかわる広い人びとに親しまれることを期待したい。
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