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みんなの保育大学シリーズ13
血液の謎と子どもの成長

【内容紹介】本書「付言」より


 私たち保育者が、世界的な化学者・医学者の永年にわたる研究の成果を、このようにやさしくおしえていただいて、それを健常で生まれた乳幼児の子育てにはもちろんのこと、たいへん重い先天異常などの、障害をもって生まれてきた乳幼児の保育に、役立たせていただけるということは、ほんとうに感謝してもしきれないことである。
 私は岡本先生から“血液のはたらき”の、その生体のふしぎなしくみを学ぶことによって、“生きる”というこの生物の意志、生命力のたくましさに、まことに感動したのであった。
 この感動が私たちに、重症の先天異常を持って生まれてきてしまった乳幼児の保育に、ひるまずに立ち向かわせてくれたのである。
 しかし、“生きたい”という、われわれ生物のもつ基本的願いにとって、まずもっとも大切な“血液”の問題は、いま、世界中の人々を不安におとしいれている問題といってもよいであろう。
 車社会における大事故によっての、大量出血に対しての治療に必要な輸血の問題は当然ではあるが、後天性免疫不全、たとえば“エイズ”の問題も、輸血が理由になる場合もある。NHKの特集によって、アメリカの失業者(ほとんどは黒人)の多くが、売血によって家族の生活を維持していることを知った。そこでは、私的な企業が血を買う権利を与えられ、そして成り立ち、その一番のお得意先が日本である、ということも知らされたのは、おどろきであった。
 また現在もなお、引きも切らずに相談にこられる多くの障害児の親には、貧血がみられるのに心が痛むのである。
 栄養と水と、酸素、生きることに欠くことのできないものを、からだのすみずみにはこんでくれるたいせつな血液が“貧しい”というわけである。飽食の日本に住みながらの栄養不良である。なんと、飢餓の世界に住む人たちと同様に、病む地球なのであろう。
 羊水が、胎児の細胞増殖と深くかかわっていることが、さきごろ、東大医学グループの研究によってあきらかにされたが、それによると、羊水がすこし少なくても、胎児の内臓の成育に影響し、出産時にすぐ一人で呼吸できず、仮死の状態をひきおこしたりするという。また心臓にも、さまざまな奇形のまま生まれる子どもも多く、現在は膵臓のはたらきもおとり、小児糖尿病が激増し、また肝臓のはたらきがにぶく、血尿などを出したら、小児出血症で死亡する例も多くなってきている、ということをきくのである。医学もそれなりに発達し、インシュリンの注射や、ビタミンKの投与などで、糖尿病や出血症で死亡することを、くいとめることもできるようになったし、心臓の手術も10年前とは、大きく大きく医学は進歩したが、それは、そうならざるを得ないことを、また意味するのである。この胎児の発育にたいせつな羊水は小・中学時代の食物が影響すると聞いて、からだの発育盛りの栄養のバランス、公害食品の追放に、もっと注意をはらわなければ、悲劇はますばかりである。
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