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みんなの保育大学シリーズ11
目のはたらきと子どもの成長

【内容紹介】本書「間違っている目の常識」より


 子どもの視力に関するみなさんの従来の常識では、学校に入る前とか、学校に入るころに、はじめてあわてふためいてわれわれのところを訪れる例が、いまでもたくさんあります。就学時健康診断は、入学前の年の11月ですね。それぐらいから3月までの間に、6歳過ぎてから連れてこられるのです。「いまごろまでよくお母さん放っとくね」なんていうくらいの悪口は覚悟でなければ、私の前にはあらわれられないのです。実は6歳というのは、それくらい大事な時期なのです。
 これはなにも視力だけじゃなくて、子どものあらゆる感性の問題を含めて、視力も、聴力も、知能にとっても大事な時期です。だからこそ、保育をやっていらっしゃるみなさんの仕事の生きがいもあるのだと思います。そういう意味では、まさに私もみなさんと同業です。
 これは、お母さん方によく聞いていただきたいのですが、目の病気というと、まず学校近視の話と間違ってしまう方が多いですね。視力が悪いと、すぐ近視ときめつけられてしまいます。実は、子どもの屈折異常は近視ばかりではないし、しかも、6歳までの子どもの近視なんていうのは、私たち小児眼科医は、ほんとうは重視していないのです。近視はほとんど全部、学校に入ってから、後天的に起こるものです。だから、われわれの目標は、学校に入ってからの後天的な近視を対象とするような、そんなのん気な話ではないわけです。
 ところが、一般的に、目の健康はというと、食物では、ウナギのキモを食べさせるとか、ビタミンAが必要だとか、生活指導ではテレビをまったくやめたりとか、ひどいのになると、3ヶ月前に僕の診察を受けて、目の病気のことを注意されると、次に来たときには、「テレビを売りましたが、目はよくなってませんか?」というような、まったく極端なことが起こります。実は、テレビが目に悪いというのは、まったくいわれのない話なのです。
 私がきょういおうとするのは、学校近視の目の対策の話ではまったくないわけです。学校近視はテレビをやめなければという話も、あまり信じないでください。あのようなものは、ほとんど気休めです。ましてや、そういう常識を、6歳までの健康管理に持ちこむと、間違いをおかしてしまいます。
 子どもの目の発育の話をいまからいたしますが、先ほどもいったように、「子どもの視力の発育が悪いよ」とお母さんにいうと、家に帰って、さっそく、ウナギのキモとホウレン草を食べさせようというふうにいいだしますが、まったく、これが違うんですね。目は、正しく見ること、正しく使うことで発育するわけです。知恵だってそうですね。子どもが楽しいことを一生懸命考えなければ、知恵は発育しません。
 ですから、目は、一生懸命見なければ発育しない。ホウレン草やウナギのキモではないわけです。いまどき、栄養が悪い子どもなんて、いるわけないですからね、われわれは余りすぎているのですよ。ですから、そういう常識は打ち払って、私の話を、一からというつもりで聞いていただきたいと思います。
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