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猫の歴史と奇話

【内容紹介】●本書「まえがき」より


 犬科と猫科とは肉食獣の大きな二つの代表である。そして、この両者の研究に先鞭をつけ、顕著な功績を残したのが、イギリスの動物学者ジョージ・マイバートである。
 また、アメリカでは、画家であり、動物学者であったアーネスト・トムソン・シートンが1909年に『猟獣の生活』4巻を著したが、そのうち、第1巻に猫科と犬科が収められている。彼は署名に狼の足跡を用いるほどの狼好きであったが、猫科の研究でも、またその権威であった。しかも、それには彼の素晴らしい画業と、当時発達した写真とが、マイバートの著書の素朴な挿画におきかえられていた。ただ、シートンの取りあげた猫はアメリカ産のものだけであったのはやむを得ない。
 さて、この本でとくにおことわりしておかなければならないのは、猫の本とは言っても、家猫の種類や、その標準、ならびに飼育法については一言も触れていないことである。しかし、その代わり、実際はそれらの基礎となる事柄を、できるだけ具体的に記すことに努めたのである。
 すなわち、欧州では古代エジプトの家畜化に始まり、また、日本では宇多天皇の飼育の日記から現代に至るまでの、猫と人との触れ合い、そして、世相との関連を、猫の歴史という形態によって示すことにしたのである。
 非常に広範囲な物語と実話を包容するこの本では、いくつかの難問に出会った。第一は原典の妙味を伝えるための引用文で、これはどうしても生硬にならざるを得ない。次は話題そのものが不可解であったり、難解であったりする場合である。たとえば鬱陵島の猫がどうして仮名垣魯文の手に入ったかという問題は、従来まったく不明であったが、これは幸いにはっきりした径路がわかった。また、猫科のものに対するマタタビの媚薬的な作用や、貝を食べると猫の耳が落ちるというような奇妙な事実も、比較的わかりやすく説明することができた。要するに、どの部分でも、あまり労せずして通読することができると思う。
 そこで、多少とも猫に愛情か、あるいは興味を持つ人々には、これらの話は、そのまま受け入れられるのではないだろうか。
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