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花・鳥・虫のしがらみ進化論 「共進化」を考える

【内容紹介】●本書「あとがき」より


 「共進化」とは何でしょう。生物も基本的には物理・化学の法則にしたがっていますから、それを超越して進化することはできません。けれどこの地球上に生物が出現して以来、生物は好むと好まざるとにかかわらず、生物的環境、つまり同種・異種の生物による選択圧の元におかれているわけです。ですから生物の進化を考えるとき、温度や水質や季節変化といった生物以外の自然要因に対して進化させた適応的な形質と、同種・他種の生物に対して進化させた適応的な形質を、共進化という概念の元にはっきり区別するのがこの本の目的です。
 「花はキレイ」とか「鳥はさえずる」とか、私たちが毎日見ていてあたりまえと思っていることも、生物学的には決してあたりまえのことではありません。花はなぜきれいなのか、鳥はなぜさえずるのかなどと考えはじめると、わからないことがいっぱいでてきます。なぜこの生物はこんな色や形をしていて、こんなことをするのだろうと考えるとき、共進化のプロセスを考えに入れることで多くの疑問が解決します。
 生物同士の進化は決して一方だけに起こるのではありません。鳥と花と虫だけに限らず、互いに何らかの関係をもつ生物の進化は、お互いがお互いの能力に磨きをかける「軍拡戦争」的に起こるわけです。これが共進化のプロセスです。そしてそれは花や実の色や形であったり、果実の実る時期や花の咲く時期、毛虫の出る時期であったりするわけです。
 鳥の世界、生き物の世界はわくわくするような謎に満ちています。特にこの本で取り上げた野外における生物の生き方を扱う生態学や行動学の分野は、まず自然界の多様な現象を科学のテーブルにのせるという部分で、バードウォッチャーをはじめ、多くのアマチュアナチュラリストが大きく貢献できる分野です。この本を読まれた読者の皆さんが、自然の中へ入るとき、これまでとちょっと違った見方で鳥や花の関係を見ていただけたら、また感じた疑問をそのままにせず、なぜだろうと深める努力をしていただけたら、そしてそこで得た感動を仲間や子どもたちと共有していただけたら、著者として、とてもうれしく思います。
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