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爆破 モンキーレンチギャング

【内容紹介】●本書より抜粋


本書は、小説の形をとってはいるが、厳密に歴史的事実に基づいている。
本書に描かれている人物、事件等はすべて実在し、あるいは現実に起きたことである。
すべては今からほんの一年前に始まった。



「奴らの尻尾を掴みました。やつらが何者で、どのように動いていて、次に何を企んでいるのか、かなり見当がついています」
「だがどこにいるかはわからない」
「はい、今のところは。しかし時間の問題です」
「で、いったい奴らは次に何を企んでいるんだ?」
「信じられないかもしれませんが」
「言ってみろ」
クランボー警視監は真東を指さし、それを示した。
「ダムか?」
「そうです、知事」
「まさかグレン・キャニオン・ダムを!…………



 絶望? ならば何も心配することはない、最後の一周を回るマラソン選手のように喘ぎながら、ヘイデュークは思い出した。来るべきものが来た。どじを踏んだ。奴らは犬コロみたいに俺を撃つだろう。ここから逃げ道はない。どこにも。ザイルだって持っていないし―ザイルを忘れた!―状況は完全に絶望的で、何も心配することなんぞありゃしない。それにライフルには弾丸が六発入っているし、357マグナムには五発装填され、予備が20発ある。
 ヘイデュークがこのように思いを巡らせている間にも、背後で大音響のあせものような銃声がはじけ、ヘリコプターが舞い戻り、十数名の徒歩の男たちと、さらに十数名の無線を装備したパトロール車輌に乗った男たちが、停止し、向きを変え、こちらに向かってくる。疲れ果て、何も食べていない、孤独な、罠に落ち追いつめられたサイコパス一人めがけて全員が集まってくる。
 午後遅かった。ちぎれた嵐雲の塊の間から、太陽は眩しく輝き、金色の天然のサーチライトがいよいよ峡谷地帯を照らす。その時ヘイデュークは、ヘリコプターに発見され、ふらふらと不用意に岩の先端へ歩いていった…………



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