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楽しく子育てアイデア・ブック

【内容紹介】●本書「訳者まえがき」より


 日本版を出すにあたっては大幅に構成を変えました。原著では基本的に『「親」をたのしむ5つのスキル』の内容と重複する部分が多く見られましたので、本書では、重複している説明の部分をできるだけ要約し、同じ例の場合は別の例に変更するなどのくふうをしました。もちろん『「親」をたのしむ5つのスキル』を読んでいなくても、この本だけで完結して理解できるように配慮したつもりです。
 また、イラストも、日本の事情に合わないと思われるものは一部は削除し、イラスト自体も、内容は変えずに、日本の読者に合うようなイラストに描きかえました。
 重複部分を削除した分、ページ数に余裕ができましたので、付録として「感情」についてのワークシートをつけることにしました。
 私は長年、女性や子どもの人権問題にかかわってきた中で、問題解決の糸口として、感情についての理解を深め、感情をうまくコントロールする能力を育てることの重要性を痛感してきました。
 暴力は感情の爆発であり、トラウマは抑圧した怒りの感情の表われでもあります。
 感情の動物といわれる人間だけが生きている喜びを感じられると同時に、悲しみや怒りで人間関係にトラブルも起こります。
 感情にはいいも悪いもありません。感情にふりまわされたくなくて感情を抑えたり、飲み込もうとしても、感情はどこへも行ってはくれません。感情は日常生活を営む中で脳神経への刺激から起こる生理的な反応だからです。感情そのものを私たちの思い通りにコントロールすることはできません。しかし、感情を理解し、どう対処するかを知ることによって、感情を表現する方法をコントロールすることは可能です。
 つまり、感情そのものを認めて、それをどう表現するか、あるいは表現しないかを自分で主体的に選ぶことはできるのです。
 夫婦は離婚できますが、親子関係は永遠です。切れない関係です。思春期は親を離れる時期で親子ともに疾風怒涛の時期を過ごすことになるかもしれません。それでも子どもは必ず親のもとに戻ってきます。それを信じて時には忍耐強く、時にはしっかりとぶつかっていく。これがただ今思春期の子どもをもつ親としての私のいつわらざる気持ちです。そして、思春期にいたるまでの親子関係のなんと大切なことかしらと思わざるをえません。あれもこれもしておけばよかったと悔いても仕方がありませんが、娘が小さい時からコミュニケーションを通して感情を聴いてきてよかったと思っています。思春期における不安材料はたくさんありますが、何か問題が起こればかならず話にくるだろうという確信、そして、何があっても感情を小出しにできる能力があるから大きなことには至らないだろうという信頼感はもてるような気がします。
 私はいつも次の世代に何を残せるのかという思いで仕事や活動をしていますが、その世代がまた次の世代を大切に考えるためには、それぞれが自分を大切にできること、そのような個人を社会は支えることだと思っています。
 だれもが大切なかけがえのない存在です。一人ひとりが自分を大切にし、他人を大切にできたら少しは今より住みやすい世の中になるのではないでしょうか。これからますます生きにくくなるであろう世の中を、どう生き抜いてくれるのか。そんな子どもをいまの大人はどう育てるのか。大きな使命だと思います。
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