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九州の大地とともに

【内容紹介】●本書「まえがき」より


 「地質学」という学問から何を連想されるでしょうか。博物館に飾ってある珍しい化石や鉱物を思い浮かべる人も多いと思います。では、地質学とは趣味の学問なのでしょうか。いえ、そうではなく、地質学は意外と身近なところで社会に役立っています。それが「応用地質学」と呼ばれている分野です。
 わが国は、太平洋の西の端にあって季節風帯に属し、美しい四季の情緒に恵まれています。しかし、季節の変わり目には梅雨前線や台風の通り道として、大雨や強風の災害に見舞われることがあります。また、太平洋を取り巻く世界有数の火山帯と地震帯にも位置しており、古くから火山噴火や大地震などの自然災害にくり返し襲われ、多くの尊い人命が失われています。九州での最近の災害例を見ても、雲仙普賢岳の噴火、鹿児島豪雨、鹿児島県北西部地震、出水の土石流など、毎年のように大きな災害が起きています。1997年の出水土石流災害では、たくさんの人が命を落とされ、土石流に対する知識の大切さが改めて痛感されました。自然災害の多い日本にとって、地質学は国民的な学問といえるのではないでしょうか。
 自然は、このように厳しい側面も持っていますが、また一方では、私たちに豊かな恵みも与えてくれます。「火の国九州」は温泉のメッカでもあり、国内はもとより海外からも多くの観光客が訪れています。また、九州は日本有数の石炭の産地として、明治以降わが国の近代化を資源、エネルギー面で支えてきました。これも自然の恵みなのです。
 ところで、応用地質学は私たちの生活を豊にするいろいろな社会整備にも大きく関わっています。これらは、ダム、高速道路、上下水道に代表される“インフラ”と呼ばれるものです。ダムや道路を実際に造っているのは建設会社の技術者の方々ですが、工事に取りかかる何年も前にダムサイトや道路のルートを決めるために活躍しているのが、応用地質学の技術者なのです。最近では、廃棄物処分や地下水汚染などの環境問題にも地質学が応用されています。このように、応用地質学はあまり目立たないものですが、社会にいろいろな形で貢献しています。
 このたび、日本応用地質学会九州支部の創立20周年を記念し、地質学の一面を知っていただくことを願って、この本をつくりました。主に九州で活躍している人たちが書いたため、実例は九州ばかりですが、内容はどこでも通用するものです。この本を読んで応用地質学に少しでも興味をもっていただければ、望外の幸せです。
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