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三峡ダムと日本

【内容紹介】●本書「まえがき」より


 「ハイドロ・マフィア」は、これを定義づけるならば、ダム、発電所、灌漑などの水関連事業を食い物にする暗黒組織網であるということができよう。この闇の世界は、コンサルタント会社、ゼネコン、重電機メーカー、商社などを中心に、これに金融界が絡み、さらに官界、政界が関与する形で形成されている。また、これらと深く結びついた専門家、学者、研究者、評論家なども、アドバイザー的役割ないしはスポークスマン的役割を演じている。
 このような政・財・官・学の癒着構造は、何もハイドロ・マフィアに限られているわけではない。その地下組織網は、経済活動のあらゆる分野に広がっている。その意味では、広くは「開発マフィア」ということができよう。このような「開発マフィア」は、官僚政治および利権政治と深く結びついて、腐敗と汚職の政治構造を生み出し、近代市民社会の在り方を大きく歪めてきた。
 本書において究極的に狙いとしているのは、三峡ダム問題を通じて、ハイドロ・マフィアの実態を解明することである。しかし、ハイドロ・マフィアは、地下組織を通じて暗躍するため、その活動の実態についての情報を入手することは、非常に難しい。調べれば調べるほど、暗黒の世界の奥深さに愕然とするばかりである。
 ハイドロ・マフィアの伏魔殿のヴェールを完全に剥ぎ取ることは、至難の業である。とはいえ、三峡プロジェクトでは、ハイドロ・マフィアは、その私益追求の強引さと焦りの故に、闇の姿を、一部ではあるが顕在化させている。
 この点を究明すること、つまり三峡ダム建設を食い物にしようとする日本および外国のハイドロ・マフィアの実態を究明することが、本書の目的の一つである。もう一つの目的は、三峡ダムの主要問題点--住民移住問題、堆砂問題、ダムの安全性の問題、歴史的・文化的遺産の保護問題、資金問題など--について、それらが、はたして克服可能なのかどうかについて検討を加えることである。
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