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日本全国化石採集の旅
化石が僕を呼んでいる

【内容紹介】●本書「はじめに」より


 琵琶湖の東部、彦根市にある僕の家の二階からは、青い山脈・鈴鹿山脈がすぐそこに見える。僕の愛する霊仙山は鈴鹿山脈の一番北の山だ。中学のときにこの霊仙山に化石採集に行って以来、この山の化石に魅せられ、以後28年間の長きにわたって研究を続けている。
 そもそも、化石採集などというものは、多分に宝探し的な要素をもっていて、他人よりも先に、しかも、よりめずらしいものを手に入れようと必死になる。冒険あり、探検ありの男の世界といってもいいかもしれない。そんな世界にのめり込み、とうとう人からは、インディ・ジョーンズみたいな奴だといわれ、褒められているのか、バカにされているのか。しかし、一度化石採集のおもしろさを知ったら、ちょっとやそっとではやめられないものがある。
 わが国のような小さな国土で、1億2000万もの人口を抱える超過密国では、最近、ますます化石が採りにくくなってきた。僕の住む琵琶湖の周辺も、開発がどんどん進んで家や工場が建ち並び、かつて、たくさん化石を産出した場所がどんどんなくなってきている。そんな状況の中でも、時々、新聞やテレビを賑わすような化石の発見がある。そんなニュースを耳にしたり目にすると、僕は、あたかも自分がその遠い過去の世界、地質時代に生きているような想像をしてしまうのである。
 昔から何かを集めることが好きで、切手に始まり、シール、コイン、鍵、バッジ、キーホルダー、マッチ箱など、比較的子供でも手に入れやすいものを集めてきた。しかしながら、切手は大変なお金がかかるし、あとのものは集めてもたかが知れている。それにこんなものは誰でも持っているもので、そうたいそう感激もないことから、しだいに興味は薄れていった。しかし、集めるということは生まれもった性格のようで、鉱物に始まり、いつしか6000点近い化石のコレクターとなってしまった。
 僕が公務員という安定した職場を捨てて早5年が経とうとしている。はやりの脱サラか? と思いきや、その後企業に就職するわけでもなく、自分で商売を始めたわけでもない。世間から見れば気楽な身分、はたまた遊び人とも思われがちだ。
 しかし、たった一度きりの人生を、好きなことをして生きるのが一番、ただただそう信じてこの5年間を過ごしてきた。めずらしい化石に出会って興奮し、大雪山の自然とふれあって感激し、生活は決して楽ではないが、心の中は充実感で満ち溢れている。
 この5年間、いろいろなことをやってきたが、この際、僕の化石人生を自己紹介し、化石の楽しみ、化石の不思議をぜひとも広く一般の方々に知っていただこうと思い、筆を執った次第である。この本は、そんな僕の化石への思いを、旅人ともにまとめたものである。
 第1章では僕が化石と出会い、その美しさ、不思議さに魅了されていった経過を、第2章では、社会人となってからも化石に夢中になり、数々の発見をしていく様子を述べたものである。そして第3章では、長年勤めた仕事を辞め、晴れて自由人となってから現在に至るまでの化石人生をお話したい。
 付録として、僕の長年の経験をもとに化石採集のノウハウ、整理方法をまとめてみた。また、全国の化石産地は自分の足で歩いた産地に加え、さまざまな参考資料をまとめあげたものだ。しかし、化石産地は絶えず変化しており、今ではすでに採集不可能となった場所や、採集禁止になっている場所もあるのでご承知願いたい。化石を収蔵・展示している施設は、国立の博物館から市町村の資料館まであらゆる施設を網羅した。僕は旅に出る都度、心がけて見学するようにしているが、数が多くてまだ半分もまわっていない。化石専門の博物館もあると思えば、専門外で少ししか展示していないところもあるが、なるべく多くの施設を掲載した。以上付録としてはたいそうなものになってしまったが、きっとお役に立つであろう。
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