![]() | ドナルド・R・プロセロ[著]佐野弘好[訳] 2,400円+税 四六判上製 272頁 2021年5月刊行 ISBN978-4-8067-1618-1 地球が、この地面が、どのようにできてきたのか知りたい………… 富裕層の趣味から出発し、聖書の記述を否定し、 サイエンスとしての地球科学を築いた発見の数々と、 その発見をもたらした岩石や地質現象を25章にわたり描く。 古代都市を滅ぼした火山灰 アルプスで発見された古代人アイスマンが語る銅の時代 ナポレオンが考案した錫の缶詰 岩石の水成論と火成論に決着をつけた露頭 鉄隕石が示す惑星の核の組成 ジルコンの砂粒に含まれる初期海洋の証拠 無酸素の地球で形成された縞状鉄鉱層 どんな岩石にも物語があり、 地球の歴史を読み解く貴重な証拠に満ちている。 岩石や地質現象が秘めている魅力的な歴史的・文化的背景、 それらが人間の地球に対する考え方や暮らしをどう変えたのかを、 地質学の謎解きに魅入られ翻弄された人びとの逸話をまじえ、 主な岩石・有名な露頭・重要な地質現象に焦点をあてて解説する。 2022/1/7(金)HONZで『岩石と文明 上』『岩石と文明 下』が紹介されました。 筆者は鎌田浩毅氏です。 【岩石と文明 下】 ![]() |
ドナルド・R・プロセロ(Donald R. Prothero)
1954年、アメリカ、カリフォルニア州生まれ。
40年にわたり、カリフォルニア工科大学、コロンビア大学などで古生物学と地質学の教鞭をとる。
ロサンゼルス自然史博物館古脊椎動物学部門の研究員。
ベストセラーとなった『進化 化石は何を語っているのか、なぜそれが重要なのか Evolution: What the Fossils Say and Why It Matters』、
『化石が語る生命の歴史 古生代編・中生代編・新生代編』(築地書館)など、多くの著書があり、
またこれまでに300を超える科学論文を発表している。
1991年に、40歳以下の傑出した古生物学者に与えられるチャールズ・シュチャート賞を受賞。
2013年に、地球科学に関する優れた著者や編集者に対して全米地球科学教師協会から与えられるジェームス・シー賞を受賞。
佐野弘好(さの・ひろよし)
1952年、大阪府生まれ。
1971年4月、九州大学理学部地質学科入学。
1980年9月、九州大学大学院理学研究科修了。
1985年3月、理学博士。
九州大学理学部助手、同大学院理学研究院教授をへて、2018年3月、定年退職。
九州大学名誉教授。専門は堆積岩石学。
フィールドワークにもとづいて、主として日本各地と
カナダ西部のカシェクリーク帯の付加体に含まれる石炭系〜三畳系石灰岩と二畳系・三畳系境界の珪質岩類を研究した。
趣味はクラシック音楽鑑賞と街歩き。
はじめに
第1章 火山灰
火の神ウルカヌスの怒り──古代都市ポンペイの悲劇
神々の炎
大災害を目撃した歴史家
ベスビオス火山大噴火の後
第2章 自然銅
アイスマンと銅の島──銅をめぐる古代の争奪戦
アルプスで発見された古代人、アイスマンが語る銅の時代
東地中海に浮かぶ銅の島、キプロス
それは海底底の断片だった
深海底で――オフィオライトが銅などの鉱石に富むわけ
第3章 錫(すず)鉱石
ランズ・エンドの錫と青銅器時代
「地の果て」の錫
ナポレオンが考案した錫の缶詰
錫鉱石の起源は?
錫王国の瓦解
第4章 傾斜不整合
「始まりは痕跡を残さず」――地質年代の途方もなく膨大な長さ
ものごとの始まり
啓蒙時代――教会・貴族社会vs学者・科学者
地質学の道を歩み始めたジェームズ・ハットン
現在は過去への鍵である――斉一主義
第5章 火成岩の岩脈
地球の巨大な熱機関――マグマの起源
水成論と火成論――岩石はどのようにできたのか
カコウ岩がマグマ起源である証拠
躍動する地球
第6章 石炭
燃える石と産業革命
薪のように燃える黒い石――石炭
産業革命を推進する
石炭紀の名前の由来――夾炭層(きょうたんそう)
石炭がもたらす災い
第7章 ジュラシックワールド
世界を変えた地質図──ウィリアム・スミスとイギリスの地層
地球の切り口
地層同定の原理を発見
収監そして名誉の回復
第8章 放射性ウラン
岩石が時を刻む──アーサー・ホームズと地球の年齢
行き詰まった地球の年代推定
それは放射能だ!
放射性崩壊で測定する地質時間
年代測定ゲーム
プレートテクトニクスの創始者
第9章 コンドライト隕石
宇宙からのメッセージ──太陽系の起源
青天の霹靂(へきれき)
初期太陽系の痕跡
隕石中の生命
第10章 鉄隕石
他の惑星の核
論争のクレーター
天空からの訪問者
核の破片
至るところ鉛、鉛
第11章 月の石
グリーンチーズか斜長岩か?──月の起源
偉大な飛躍
月はどうやってできたのか―妹説、娘説、それとも捕獲説
衝突で吹き飛ばされた初期地球
月の輝く夜に
第12章 ジルコン
初期海洋と初期生命? ひと粒の砂に秘められた証拠
ダイヤモンド以上の高級品
地球最古の岩石は?
冷えた地球
第13章 ストロマトライト
シアノバクテリアと最古の生命
ダーウィンのジレンマ
疑似化石、それとも本物の化石?
シャーク湾で発見された生きたストロマトライト
ねばねばの膜におおわれた惑星
第14章 縞状鉄鉱層
鉄鉱石でできた山──地球の初期大気
鉄鉱山の富と花開く文化
無酸素の地球で形成された縞状鉄鉱層
酸素による大虐殺イベント
第15章 タービダイト
ケーブル切断の謎が明らかにした海底地すべり堆積物
問題その1・ちぎれた海底ケーブルの謎
問題その2・何百回も続く級化構造の不思議
問題その3・混濁流はどのように機能したのか
謎が解けた!
第16章 ダイアミクタイト
熱帯の氷床とスノーボール・アース
オーストラリアの地層の謎
氷成堆積物と石灰岩の互層
雪だるま、現れる
スノーボール、成長開始
全球凍結か部分凍結か?
図版クレジット
もっと詳しく知るための文献ガイド
どんな岩石にも化石にも物語がある。多くの人びとにとって岩石はただの岩石でしかないが、経験を積んだ地質学者には、方法さえ知っていれば岩石は、そこから明確に読み取ることができる貴重な証拠に満ちた謎解きの手がかりだ。私は地質学とはテレビのCSIシリーズ[訳註:科学捜査班。アメリカの人気テレビドラマシリーズ(2000〜2015年放送)]のようなものだと学生に言う。地質学者と古生物学者は科学捜査官を演じ、ちょっとした証拠のかけらを集めて、過去の「事件現場」を――しばしば信じられないほど詳しく復元してみせるからだ。
「化石が語る生命の歴史」シリーズ全3巻のスタイルにならって、私は一般読者また論理的続編として専門家にも、正確だが魅力的で、読みやすくて面白い本を執筆しようと努めてきた。「化石が語る生命の歴史」シリーズと同じように、章ごとにある特定の岩石や有名な露頭、または重要な地質現象に焦点をあてている。私はこれらの岩石や地質現象が秘めている魅力的な歴史的・文化的背景と、岩石や地質現象が人びとの地球に対する考え方をどのように変えたのか、またどのくらい確かに地球の営みが機能するのかを関連づけて説明しよう。
これに加えて、私はこれらを発見した魅力あふれる人びとのこと、そして彼らがどのようにしてそれらを発見したのかの物語を紡ぎ上げてみようと思った。ほとんどの場合、パズルの一つひとつのピースのように働く、予期しなかったずっと小さな発見とともにゆっくりと最終的な理解が訪れた。全体像はピースが組み合わさったときについにはっきりしたものになったのだ。多くの章で、説明がついていないパズルのピースとその答えというテーマに読者は出会うことだろう。